奇祭Ⅲ~BLACKNAZARENE Anniversary Oneman LIVE~ライブレポート

2022年04月04日 | ミュージック

──はじまった。
3月17日、Spotify O-EASTにて開催された「奇祭Ⅲ~BLACKNAZARENE Anniversary Oneman LIVE~」を見て、そう思わずにはいられなかった。仲間がひとり、またひとりと減っていき、不安にかられていた彼女たちはもういない。この6人でアドマイラー(BLACKNAZARENEのファン呼称)と共に未来を切り開くという覚悟を、まざまざと見せつけたのである。

チケットはソールドアウトということもあり、フロアには現状での最大人数がギュッと肩を並べる。開演時刻になり照明が落ちると、暗闇が会場を包みこんだ。パッと放たれた赤いスポットライトは紗幕ごしにメンバーを形どり、SEと共にオーディエンスの気持ちを高揚させる。いよいよ幕が開くと、パンクを基調とした真っ赤な新衣装に身を包んだメンバー達が現れた。

オープニングの「PARADOX」から、すでに6人はフルスロットル。伸びやかな声をさとりが響かせたかと思えば、ひみこも一生懸命に目を見て歌を届けようとする。落ちサビでは、いずみと楓のパワフルな声の重なりが会場の熱気をさらにブースト。ステージから発せられる熱にほだされるように、アドマイラーも全力で届いていることを表明していた。

楓が「全員でバカ騒ぎしようぜ!」と声をかけ、繋がれたのは「Stray straight」。ハンズアップにより掲げられた白いサイリウムがキラキラと瞬き、ステージの6人をより魅力的に演出する。もあの“ぼくたちは 何かの代わりなんかじゃない”というパートが真っすぐに飛んできたのは、並々でない決意が音楽に乗っていたからなのだろう。旧体制時代にリリースされた楽曲を、新メンバーが歌い継ぐのは珍しいことではないかもしれないが、自身の言葉にして音楽にして届けるのは大変なことだ。もあの鮮烈な一節は「新メンバーは旧メンバーの代わりではなく、新たなBLACKNAZARENEを魅せていくのだ」という強い意志を感じさせたのである。「BAD END」では挑発的な視線を飛ばし、ノンストップで駆け抜けていった。

続くセクションでは、最新作『lord of the fate』の3曲を投下。「Twilight zone」では指先まで意識した繊細な振りと表情で情景を描き、「lord of the fate」ではサビでパッと表情を変え希望を放つ。個性的な振付の「faith」だって、今のBLACKNAZARENEにかかればお手の物。その場の空気を全部楽しみつくし、パフォーマンスに還元できるグループになっていることを、色濃く感じさせた。

VTRに映し出された「きっとこれは弱虫な僕への始まりのシグナルなんだ」という言葉をきっかけに、BLACKNAZARENEの信念を表す「The beginning」へ。観客ひとりひとりと目を合わせながら歌うメンバーの姿は、「これからも私たちを信じて」という強い想いを感じさせる。実果子の放つ“僕が連れていくよ”というリリックは決意表明のように響いた。BLACKNAZARENEの物語を描いたような「アクアマリン」、ラップのような歌い方が新たな魅力を開花させる「未完成」と展開。さとりが「みなさん、まだまだ体力余ってますか!」と煽り、ラストスパートをかけていく。
「Official Fake」のイントロが流れ、ざわっと沸き立つオーディエンス。サビではいろいろな組み合わせで声を重ね、この6人だからこそ生み出せるハーモニーを響かせていく。ラストには「BLACK SUPERNOVA」を全身全霊で届けきり、会場一体となる特大ジャンプで締めくくったのだった。

本編が終了すると、ほどなくしてスクリーンに「重大発表」の文字が映し出され、「奇祭Ⅲ~BLACKNAZARENE Anniversary Oneman LIVE~」の円盤化とEX THEATER ROPPONGIでワンマンライブする旨を発表。なかでも最大規模でのワンマンライブの開催には、アドマイラーが強く感動していた。

告知が終わると、上半身をライブTシャツに着替えたメンバーが登場し記念撮影。一呼吸を置き、それぞれの胸の内を語っていった。「素敵な景色を見たからこそ、もっと素敵な景色を見たい」と涙声で語るひみこに、「BLACKNAZARENEの乃上楓として、守り歌い続けていきます」と決意を口にする楓。もあは鼻声になりながらも「今のBLACKNAZARENEを見てください」と力強く訴え、さとりは凛とした視線で「これからもこのメンバーで夢を叶えていきたい」と真っすぐに前を見つめる。思いが溢れだした実果子は「ちょっと待って…」から切り出し、「BLACKNAZARENEを守ってくれてありがとうって言われたけど、守ってくれたのはアドマイラーのみなさんのおかげです」と感謝を言葉にした。

一段とエモーショナルな言葉を放ったのは、最後にメッセージを紡いだいずみだった。「今日ここにいる、たった一人のあなたが誰かひとりでも欠けていたら、このライブは絶対に成功しなかった。(中略)私たちは、私は、どんなに大きくなっても、どんなに距離が遠くなっても、ここにいるたったひとりのあなた。誰かじゃないアナタだよ。ここにいるたったひとりのあなたに向けて、ずっと歌い続けます。そして今日、私たちがこのステージから伝えた愛を、みんないつかどこかで誰かに渡してください。そうして世界は繋がっていくし、そうして私たちBLACKNAZARENEがやっている音楽に意味が生まれます。みんなの力で本当に素敵な世界にしていきたい。私たちBLACKNAZARENEは、BLACKNAZARENEの音楽とアナタと共にこの世界を生きていきたいんです。それが、今のBLACKNAZARENEです」

偽りのない真っすぐな言葉で思いを伝えきると、「去年の5月4日、この6人で初めて披露した曲」と放ち「Harts」へとなだれこんだ。“この世界で君が生きる理由になるよ”というリリックは、誓いのようないずみの言葉を聞いたあとだと一層力強く響く。その後も、再出発のナンバーである「URGE」「Throne」をパフォーマンスし、真っ赤な花吹雪と共にアニバーサリーワンマンを締めくくったのだった。

「これから新しいBLACKNAZARENEが始まるのに、ラストシーンなんて歌ってたまるか!!」これは『URGE』リリース時、もともと「LAST SCENE」という仮タイトルが付いていた曲を「The beginning」と改めた理由について語ったいずみの言葉だ。彼女が口にしているように、BLACKNAZARENEは新しく始まったのである。
2021年5月に加入したもあ、ひみこ、さとり、楓は初期メンバーの代わりにはなれないし、そもそも代わりでもない。今のBLACKNAZARENEだからこそできる音楽を鳴らし、この6人でしかなしえない未来を描いていく。そして、たったひとりのアナタが生きるための支えになるのだ。これからの未来を考えると、今はまだ序章に過ぎない段階だ。新たな物語の始まりに、多くの人が気づくことを願ってやまない。

BLACKNAZARENE

「THUG×kawaii」をコンセプトにアンダーグラウンドなストリートカルチャーとアイドルシーンを融合させ、女の子の媚びない強さを魅せるBLACKNAZARENE(ブラックナザレ)。強い女性像を連想させる音楽性で同性からの人気を集め、これからの時代を切り開く、今もっとも目が離せない実力派グループである。

Official Site:https://blacknazarene.tokyo
Twitter:@blacknzrn

この記事を書いた人

Music Worder。音楽とお酒と人が好き。 Twitter:@ayach___

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