yucatが9周年アコースティック配信ライブを通して届けてくれた、笑顔の種。

2020年11月01日 | ミュージック
長澤智典
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2011年10月31日に「スチームパンク・ゴシックをテーマにダークファンタジーな世界(PARALLEL WORLD)を創造している」yucatが誕生してから、今年で9周年を迎えた。その記念日となる2020年10月31日に、yucatが「PARALLEL ONLINE LIVE 2020~yucat 生誕9周年 Party~」と題し、溝ノ口劇場よりアコースティックなスタイルで配信ライブを行なった。
 この日は、YASHIRO(G)と桑原康輔(Key)を迎えたトリオ編成。yucatにとっては、今年2回目となる配信ライブ。折しもHALLOWEEN当日ということもあり、yucatは深海の歌姫ローレライの姿で登場。この日のライブの模様を、ここにお届けしたい。


 「Fairy Story(10th Anniversary ver.)」のMV放映を受け、HALLOWEENのイメージ映像と共に「505」のイントロが流れだす。「キャーッ!!」という声が入る直前に画面は暗転。しっとりとしたアコギの音色へ寄り添うように「505」を歌うyucatの姿に画面はシフト。「生誕9周年」を祝した配信ライブは、yucatの始まりを告げた「505」から幕を開けた。優しく身体を揺らしながら、心の声を零すようにyucatは歌う。彼女の躍動する胸の内をYASHIROのギターが縦軸となり騒がせれば、桑原康輔のエレピの音色が横軸となって、彼女の寂しい感情へ寄り添ってゆく。とても厳かな。でも、心に期待の灯をともす始まりだ。
 桑原康輔の弾むエレピの音が気持ちを掻き立てる。力強い声でyucatが歌いだしたのが、「暴走マシーン」。演奏が進むごとに心のアクセルを踏み込み、yucatは少しずつ感情の熱を上げてゆく。跳ねたエレピの音色の上で、彼女は気持ちを走らせるように歌う。その歌声に気持ちを重ね合わせていたら、何時しか一緒に心を弾ませ駆けだしていた。
澄み渡る高音域の歌声が、ここに来なさいと呼びかける。走り出した列車が向かったのが、深海に広がる世界。ローレライとなったyucatは魅惑的な歌声を朗々と響かせ、画面の先にいる人たちの心の視線を捉え、釘付けにしていく。蒼く麗美な音色に触れ、気持ちが深く深く落ちてゆく。yucatは「ローレライ〜消滅海底都市〜」を一人の女性の生きた道のりを語るように歌いながら、触れた人たちの心を魅了していった。


 ローレライとなったyucatは、「Voice」を介し心の声を響かせる。なぜ、彼女がこの地に辿り着き、歌いだしたのか。その理由(わけ)を語るように…。嘆く心模様を吐き出すように歌う声から、ずっと視線を離したくなかった。その歌声に触れながら、同じよう悲しみに気持ちを染めていたかった。
その涙の背景には、どんな生きる物語が綴られてきたのだろう。yucatは寂しい胸の内を零すように、愛しい人を乞うよう「人魚姫の涙」を歌っていた。歌詞を紡ぐ歌声のひと言ひと言が、零れる蒼い涙のように心に落ちてゆく。もの悲しくスキャットする歌声は、想いを馳せる涙声のようにも届いていた。
アコギのボディを高らかに鳴らす音を合図に、深海に沈んだ暴走列車はノアの箱船に姿を変え、ゆっくりと浮上する。深海を生涯の地としたローレライに別れを告げるように、彼女へ鎮魂の想いを捧げるよう、yucatは生を抱いた声を力強く響かせ、櫂を漕ぐように腕を振りながら「ノアの箱船」を歌っていた。この船の次の行く先にどんな世界が待っているのか。悲しみの荷物を背負いながら、3人は箱船(演奏)をゆっくりと、でも確かな強い意志を持って上へ上へと漕ぎ続けていた。


 画面は、HALLOWEENのイラスト映像に。そこへゲストで登場したのが、川崎フロンターレ公認キャラクターのVTuberカワサキまるこ(声をyucatが担当)。彼女は、デビュー曲「青く青く」を爽やかな歌声を響かせ歌いだした。yucatが作り上げた幻想的な夜の世界へ、彼女は眩しい光を射してゆく。今宵はオレンジの満月や古城を背景に魔女が夜空を飛び交うステージということもあり、いつもの「青く青く」が、より色の深い「蒼く蒼く」として聞こえてきた。両手を翼のように広げて歌う姿も印象的だ。彼女もyucatと同じように、心を現実から解き放ち、甘いキャンディのように歌声を振りまきながら、舞うように夜空を飛び交っていた。

 アコギとエレピの織りなす哀愁を帯びた演奏が、気持ちの内側へ内側へと導いてゆく。心の中に広がる無限の宇宙へ触れた人たちを呼び入れるように、言葉に力を込めながらyucatは「子宮的宇宙」を歌っていた。彼女が、観客たちを次に連れ出したのは、心のコスモと言うべきインナーワールド。ふたたび語り部となったyucatが、触れた人たちの心へ物語を染み込ませてゆく。
 切々と言葉を零すように「サクラサイエンス」を歌唱。「消えないで」と嘆き叫ぶように歌いあげる声が、心をギュッとしめつける。あの頃、確かに抱いた愛しい人の温もりを思い返すように、僅かな希望も込めながら悲嘆に暮れる想いを舞い散らすようにyucatは歌声を揺らしていた。


 小さな輝きを散らすように響くエレピの音色へ導かれ、yucatは込み上げる想いを零すように「steamroid」を歌いあげる。迷い、揺れ動く心模様を絶唱するyucat。彼女へ寄り添うように、切々とした音を奏でるYASHIROと桑原康輔。強い感情の揺れが、抑揚を持ったyucatの歌声を通して胸にせまっていた。
ふたたび心へ希望の灯をともすように、yucatは祈るように「全知全能ノ樹」を歌いあげる。様々な経験を積み重ねた心の旅の先には、どんな答えが待っているのだろうか。そこへ希望を見いだすのか、それとも嘆くことを重ね続けるのか。それは、一人一人が導き出すこと。yucatは歌う、「壊すためじゃなく 守るために」と。yucatは何時だって、暗い病み(闇)の中から光を見つめてゆく。彼女の歌を道標に、あなたはどんな道を描き、進むだろうか…。

yucatは、MCで「変わらないために、変わり続けることが大事」と語っていた。あなたは、その言葉の意味をどう捉えるだろうか。ぜひ、アーカイブを通して、彼女の言葉に触れてもらいたい。

 さぁ、あなたの意識を変えていけ。選択するのは、あなた自身だ。yucatは、嘆きに包まれた今の世界を変えていけるようにと願いを込めながら「Change the World」を朗々と歌っていた。その歌声が少しでも世の中へ染み渡って欲しい。この歌に触れた人の心に、少しでも意識のシフトが起きたなら、それがバタフライエフェクト効果のように何かを変えてゆく…かも知れない。
yucatが最後に届けたのは、yucatが生まれるきっかけであり、今も、大勢の人たちの勇気の道標になっている「Fairy Story(10th Anniversary ver.)」だ。この歌に触れるたび、無性に心に嬉し涙が込み上がる。歌詞に込めた言葉のひと言ひと言が、心に希望を与える魔法の呪文となり、みずからの意識に輝きを降り注いでゆく。不器用な毎日を送りながら、心を悶々としている人たちはけっして少なくはないだろう。そんな心にかかった靄を、この歌は希望という風で消し去っていく。けっしてポジティブな歌ではない。いや、悲しみの淵から這い上がろうとしたときに見えてきた本当に大切なものをyucatは伝えてきた。彼女は歌う、「お伽話みたいに上手くはいかないけど だからこそ気付ける優しさがあるなら」と。「Fairy Story」に触れるたび、素直な笑顔が生まれる。笑顔になれたことで、幸せを一つ握りしめられる。その小さな幸福を、この歌に、yucatのライブへ触れるたびに感じられるからこそ、ふたたびyucatの描く物語を読みたくなる。

この日より、10年目へと踏みだしたyucat。2021年は様々な大きな展開が待っている。彼女の動きから目を離さずにいてもらいたい。

PHOTO:リリィ(ririco:ramu)
TEXT:長澤智典

Fairy Story (10th Anniversary ver.) Lyric Movie / yucat

 

インフォメーション

PARALLEL ONLINE LIVE 2020
~yucat 生誕9周年 Party~
10/31@溝の口劇場
アーカイブ(11月13日まで)
チケットも11/13までは購入可能です
https://parallelkingdom.jp/shop%EF%BC%92/

Fairy Story(10th Anniversary ver.)ダウンロード
https://linkco.re/u3VeGSVh

yucat Web
http://www.yucat1031.com/
yucat twitter
https://twitter.com/yucat1031
yucat YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/yucat1031

―セットリスト―
「505」
「暴走マシーン」
「ローレライ 〜消滅海底都市〜」
「Voice」
「人魚姫の涙」
「ノアの箱船」
「青く青く」
「子宮的宇宙」
「サクラサイエンス」
「steamroid」
「全知全能ノ樹」
「Change the World」
「Fairy Story(10th Anniversary ver.)」

この記事を書いた人

長澤智典
音楽を中心に執筆中のライター。「あなたのため」に頑張ります。 twitter @nagasawatomonor Web http://vues.jp/

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