中国の人気ロリータモデルやコスプレイヤーを紹介
日本から海外に広まったコスプレとロリータですが、近年は中国の勢いが目覚ましいです。
コミックマーケットのようなコスプレ参加可能な大きなイベントやTwitterなどのSNSでは、中国コスプレイヤーのクオリティーの高さが一種のブランドになりつつあります。
ロリータにおいても中国では大流行しており、日本のブランド数が約50に対して150以上ものブランドがあります。アニメの影響で広まった背景から”中国版コミケ” 「上海Comicup」における出展数の3分の1をロリータブランドが占め、日本ブランドよりも価格がリーズナブルなのとデザインの多様性から一般人にとっても身近なファッションアイテムに。日本のブランドが進出するだけでなく、逆輸入の形で日本にも中国ロリータのセレクトショップがオープンし、日本でも周知される中国ロリータモデルが増えています。
そこで、近年来日することも多い、中国で活躍するコスプレイヤーやロリータモデルを、インタビューとフォトレポートを通して紹介して行きます。
全全Piggyちゃん
全全Piggyo(チェンチェン・ピギー)/「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」 2020上海ランウェイ/撮影:花轮
プロフィール
中国で活躍する大人気ロリータモデル。2019年は500着以上の新作ロリータを着用。
お茶会や一日店長などロリータイベントにも数多く参加しており、上海で開催された「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT2020 ランウェイ」では新作ドレスのモデルを務める。
またモデル業の傍ら、服飾デザイナー、イラストレーター、コスプレイヤーと多岐に渡り活動中!
weibo:全全Piggy
中国ロリータモデルはどんなことをするの?
──中国のどこにお住まいですか?
全全Piggy:中国安徽(あんき)省にある蕪湖市です。「中華八大菜系」に数えられる山野草や野生動物などが代表的な食材の「安徽料理」が有名です。
──ロリータに興味を持ったきっかけは?モデルとして1年間でどれくらい服を着ますか?
全全Piggy:子供の頃から日本のアニメをたくさん観てきたので日本の文化にとても興味があったからです。加えて、撮影してもらって良い写真を残すのが好きでした。なので、ロリータに辿り着いてからは、のめり込みました。
「物语者」/撮影:枕鹤
──ロリータモデルになって何年目ですか?1年で何着くらいロリータ服を着ますか?
全全Piggy:大学生の時から始めたのでもう7年くらい経ちます。2019年は500着以上のロリータ服のモデルを務めました。
──中国のロリータブランドはどのような基準でモデルに依頼するのですか?ご自身の場合はいかがです?
全全Piggy:どのモデルにも自分のスタイルがあります。清楚系の人もいれば、顔立ちや雰囲気が欧米系寄りな人、今のファッション業界の流行にマッチした人もいます。ブランドの新作ごとに適したイメージの人を探していると思います。私の場合は、スウィート系ロリータ向けのスタイルな気がします。ただ、一つの表現しかできないと着れる服のバリエーションが減るので、それ以外のスタイルも表現の幅を広げてきました。
「苏沫SUEMO」/撮影:枕鹤
──中国のロリータモデルの仕事内容を教えてください。1ブランドの新作発表会は年間どれくらいの回数ですか?
全全Piggy:一般的に求められるのは、モデルとしてロリータ服のコンセプトを表現することです。私はずっとメイクやロリータ服とアクセサリー、小道具に組み合わせを学んでいます。元々、趣味でモデルとして活動してきたので、そういった知識に興味があって少しずつ身につけることができました。
新作発表会に関しては中国だとブランド単体での開催は少なく、複数のブランドが集まって共催することが多いです。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で自粛が続きましたが、2019年は私も20以上の発表会にモデルとして参加しています。
──中国のお茶会はどんな内容ですか?
全全Piggy:そのブランドの新作を着たモデルがたくさん集まってランウェイを披露しますね。時には一般参加の方も自身のお気に入りコーデでランウェイすることもあります。お茶会はロリータ愛好家にとって、仲の良い友達やブランドファンの仲間たちと交流できる貴重な機会です。
──中国はオンラインショップが主流ですが、実店舗を持つブランドで1日店長を務めたことはありますか?
全全Piggy:はい。最近は実店舗をオープンするロリータブランドも増えたので、一日店長を務めたことも何回かあります。当日は1着または複数のロリータ服を着て、お店の宣伝とブランドの人気獲得に努めます!SNSやお茶会と違って、ロリータ愛好家ではない新規層の方に出会えるし、広められるのでとても嬉しい体験です。
「Bramble Rose」/撮影:睿瑶爸爸
中国ロリータモデルの撮影における裁量は大きい
──ご自身が得意なポーズや表情はありますか?
全全Piggy:ロリータ服のコンセプトごとに異なるポージングが必要ですが、シャッターに合わせてスカートを自分でひらめかせるのが得意です!スカートのひらめきがあると写真の見栄えが良くなります。表情については、やっぱりそのロリータ服を着れる喜びを表す会心の笑顔や優雅さが大事になってきます。
「Bramble Rose」/撮影:睿瑶爸爸
──新作モデルの撮影では、モデルとカメラマンが撮影のアイディアを練ると聞きましたが、実際の裁量は大きいのですか?
全全Piggy:はい。モデルとカメラマンごとに独自のスタイルが生まれますから、ブランド側は信頼できる組み合わせを決めた後は撮影の細かい点は任せてくれます。もちろん、事前にブランド側やカメラマンとの打ち合わせがあります。私もモデルとしてカメラマンに様々なアイディアや表現の仕方を提案します。組んでいる回数が多いカメラマンであっても、暗黙の了解に甘んじるのではなく、新しいサプライズが生まれる写真になるようにしたいんです。
あと撮影にあたっては、アクセサリーや小道具、ウィッグセット、メイク、ソックスや靴はモデルが自分で準備します。たまにブランド側の予算から優れた造形師に依頼することもありますが、ほとんどは自前で賄います。なので、家にあるアクセサリーや小道具などのアイテムはどんどん増えていきます(笑)。モデルに委ねられている裁量は大きく、ロリータ服ごとに生き生きとした世界観があるので考えるのがとても楽しいです。
「Forest Wizard」/撮影:睿瑶爸爸
──着こなしのルールはありますか?
全全Piggy:特にルールはありません。現在の中国ロリータ文化は寛容で多くの変化を繰り返していると感じています。
ロリータモデルになるにはどうすればいいの?
──ロリータモデルに選ばれるためにはどんなことをすればいいですか?
全全Piggy:積極的に自分のお気に入りコーデ写真をweiboに投稿するのがおすすめです。ただし、急いで結果を求めず、反響があまりなくても自分を否定する必要がありません。自分が好きなことを望んで根気強く続けていけば、きっとより多くの同志や応援してくれる人たちを得られます。
「四叶工坊」/撮影:睿瑶爸爸
──ロリータモデルとして必要な資質は何だとお考えですか?
全全Piggy:本音を言うと、ロリータモデルは必ずしも良い職業とは限りません(笑)。私も縁あってモデルになれただけとも言えます。ただし、ロリータ服を着る時は、見てくれる方々に喜んでもらえるという自信を持つことが最も重要だと考えています。もし本当に職業としてロリータモデルになりたいのであれば、ロリータ服への絶えることのない熱情と愛、表現を高めるためのポジティブな努力が欠かせないです。
──これまでロリータモデルとして印象に残る仕事はありますか?
全全Piggy:ロリータモデルの仕事はどれも楽しいので、記憶に残っているのは体調が良くなかった時ですかね。夏の炎天下で1日中撮影をした時は目眩がしましたし、時には雨が降る冬の寒空で撮影をしている時は体が芯まで冷えました。実際のところ、撮影時は普段とは違う体の使い方をしますから、忍耐力が求められます。けれど、良い写真のためにはできる限りの努力をする価値があります!
──ロリータモデル同士で交流することはありますか?
全全Piggy:よく知っているモデルさん同士の交流はありますね。コーデやメイクの技術交換とかもします。自分と同じ趣味の人とはすぐ仲良くなりやすいです。
「HinanaQueena」/撮影:在森林
コーデ選びの秘訣やお気に入りのコスメアイテムは?
──普段はどんな服を着ますか?
全全Piggy:ロリータであれば、休みの時は日常系ロリータ服で、動漫展(※)やお茶会に参加する時はゴージャスで複雑なデザインのロリータ服を着ることが多いです。行く先のロケーションに合わせてコーデを変えています。また、中国では普段着としての制服、伝統衣装の漢服も流行っているので着ることもあります。日本の和服も好きです。
※中国におけるアニメやゲーム、同人誌即売会の総称。
制服/撮影:睿瑶爸爸
漢服「剪风裁雪」/撮影:未书
和服/撮影:睿瑶爸爸
──肌保湿の秘訣は?
全全Piggy:私が持っているコスメアイテムは日常的に使いやすいものが多いです。チークは「canmake」がとくに好きで、ベースメイクは「クレ・ド・ポー ボーテ」と「COVERMARK(カバーマーク)」をずっと使っています。ベースメイクの時は保湿を十分にしてから、回数を分けて少しずつ塗っていきます。そうすることで肌の状態を良好に保てるんです。
──ファッション・デザインのお仕事もやっていると聞きました。
全全Piggy:2年前からファッションデザインもするようになりました。ただ、当時の私が好きなデザインは学生風に偏ってて、まだまだアイディアと熟練度が足りなかったと思います。ただ、自分が新しい経験を通して学べることが多く、ファッションデザインは私にとって非常に大切な機会になっています。
──イラストは学校で学んだのですか?
全全Piggy:美術系の大学で学びました。これも日本のアニメの影響で、子供の時からアニメのキャラクターを描くのが大好きだったため、大学でもアニメーションを専攻したんです。自分が好きなことをずっと学べたのはとても嬉しい時間でした。
2020年はBABYのお茶会に初めて参加しました
──日本のロリータと中国ロリータ、それぞれどんな印象を持っていますか?
全全Piggy:日本のロリータ文化は中国よりも早く生まれ、私も映画『下妻物語』でロリータ服を知りました。当時は中国ロリータの種類も現在ほど多くありませんでしたが、年々中国ロリータ人気は高まり、国内のブランドも努力を続けて、非常に多くのバリエーションに富んだロリータ服が生まれていますね。
──『下妻物語』と言えば、「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT(以下、BABY)」です。初めて着たのはいつですか?
全全Piggy:約4年前です。自分で「BABY」の王道ロリータを購入したんです。「BABY」の鮮やかな色合いのロリータ服がずっと好きで、服を着るとまるで西洋人形になった気がしました。
「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」 2020上海ランウェイ
──「BABY」に対してはどんな印象がありますか?
全全Piggy:「BABY」のアイテムはロリータ愛好家にとってずっと憧れです。私もロリータ服を着るようになって「BABY」をすぐに知りました。以来、ずっと好きなブランドですし、「BABY」デザイナーたちのロリータ文化への熱情とこだわりをいつも感じることができます。
──つい最近開催されたお茶会「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT2020 ランウェイ」では新作ドレスのモデルを務めていかがでしたか?
全全Piggy:今回はモデルとして初めて「BABY」のお茶会に参加しました!2020年は新型コロナウイルスの影響で従来とは違う特別なお茶会でした。それでもスタッフの皆さんと一致団結して無事に終えられた達成感があります。ロリータモデルとしてイベントで「BABY」のブースに立たせてもらうとき以上に、ブランド理念やスタッフの方のロリータ服に対する愛を感じることができました。
ランウェイでも多くの人に気を配られ、激励をして頂けました!本当に貴重な体験をさせてもらって嬉しいですし、「BABY」のさらなる発展を望んでいます。
私が着た「BABY」の新作はとても趣のある中華風で、デザイナーの美意識と繊細な設計が詰め込まれていました!これだけ鮮やかに映える赤白黒の組み合わせはなかなかないです。重厚かつロマンあるロリータ服を着れる機会をもらえて、とても嬉しいです!
「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」 2020上海ランウェイ/撮影:花轮
──最後に今後の目標を教えてください。
全全Piggy:大きな目標と言えるものはありません(笑)。自分が楽しく生活でき、興味があることをしっかりやることくらいですかね。色んなことが起きるのが人生ですけど、未知のことも決して悪いことじゃないので楽しみにしています。