これは、嬉しい衝撃だ。声優/アーティストとして活動中の富田美憂が、「大人の恋愛」をコンセプトにしたミニアルバム『Fizzy Night』を11月23日にリリース。これまでのイメージを嬉しく裏切る”大人の女性の心模様”が、次々と曲に映し出される。思わず、「富田さんどうしたんですか?!」と問いかけたくなる本作の魅力を、さっそく紐解いた。
「”大人の恋愛”をコンセプトに据えた作品にしよう」というコンセプトに着地したのが、ミニアルバムの『Fizzy Night』
──最新ミニアルバム『Fizzy Night』を作るに当たって掲げたテーマが、「大人の恋愛」。まずは、この作品が生まれる背景から教えてください。
富田美憂 今年4月に、『OveR』と題したシングル作品をリリースしました。その後、チームの方々と「次は、どういう作品を作ろうか」というお話をしてきました。
以前から「いつか、コンセプトを持った作品を作れたら面白そうですよね」という言葉を口にしていたのですが、その発言をスタッフの方々が覚えていてくださっていて、「じゃあ、次のタイミングでコンセプトアルバムを作ろうか」、と。しかも、「ノンタイアップだからこそ出来る作品にしよう」ということから誕生したのが、ミニアルバムの『Fizzy Night』になります。
──「大人の恋愛」というコンセプトに繋がったきっかけも、気になります。
富田美憂 「新しい作品を作ろう」というお話が出た時点で、わたしの手元には、今回収録している『Coming Up』と『My Guiding Star』の2曲がありました。以前からこの2曲は、タイミングを見て形にしようと考えていた曲たち。中でも『Coming Up』はシティポップをテーマに据えて作り上げた、”夜感”の出た楽曲でした。そこから、「これまでの富田美憂は”夜感の出た大人っぽい姿”をあまり打ち出すことがなかったから、新しい富田美憂像を描くうえで、そこにスポットを当てるのも面白いんじゃないか」という案が生まれ、「”大人の恋愛”をコンセプトに据えた作品にしよう」というコンセプトに着地しました。
──もともと手元にあった楽曲が、今の方向性を決定づける一つの要因に繋がったわけですね。
富田美憂 要因の一つにはなりましたね。『Coming Up』は、シティポップをテーマに作った楽曲という理由もあって、最初は「シティポップをテーマに1枚作り上げよう」という案も出ていました。実際、わたしも好きな音楽スタイルだから、そのコンセプトで作ることに興味はありました。ですが大人っぽいjazzyな楽曲なども歌ってみたい気持ちもあったので、一つのコンセプトで固めるよりも、「いろんな大人っぽい楽曲を集めた作品にしたい」という思いから、今回は”夜感の出た曲たちを“集め始めました。
──収録した『Coming Up』『群青Dreaming』『Catcher』の歌詞には、男女の妖しくも危険な恋心が描かれています。そこは、先に誕生していた『Coming Up』の歌詞がそういう匂いを持っていた楽曲だったことから繋がったテーマなのでしょうか。
富田美憂 まさに『Coming Up』は、”大人の恋愛”という言葉に相応しい歌詞の内容でした。実はこの曲に関しては、本当に偶然でした。先に上げた『群青Dreaming』と『Catcher』。もう1曲新たに作った『ベンチ』の3曲は、楽曲の制作にあたり、作家の方々に「大人の恋愛をテーマに」とだけ伝えました。そのうえで、いろんな作家さんから楽曲をいただいた中、わたし自身の感覚にフィットする今回の曲たちを選びました。歌詞だけを捉えると、一つの物語のようにも聞こえますけど。1曲1曲独立した形で生まれています。それを一つの物語のように聞けるのも、コンセプトアルバムだからこその面白さだと感じています。
口には出せないけど、「あなたのことを想い、慕っています」という一途さを持っている。そういう女性の心情になって歌いました。
──ここからは、収録した1曲1曲にスポットを当てたいなと思います。冒頭を飾ったのが、シティポップ調の『Coming Up』。この曲に出てくる女性は、好きな人とはただならぬ関係性があると言いますか。あまり表には出せない恋愛をしていません?
富田美憂 今回収録した他の曲も含めてですが、歌詞は、人それぞれ自由に解釈を楽しんでもらいたいし、そういう内容にもしています。わたしが『Coming Up』を歌うときに意識したのが、相手がすごく年上の方ということ。この歌に登場する女性は、「好きです」とはっきり口には出せない状況に置かれている。口には出せないけど、「あなたのことを想い、慕っています」という一途さを持っている。そういう女性の心情になって歌いました。
──『群青Dreaming』には、「好き」だからこそ相手に振り回されてしまう女性が登場していませんか?
富田美憂 わたしも『群青Dreaming』を受け取ったとき、「この女性は相手に振り回されているな」と感じました。歌詞へ、その心苦しさも描写してあるように、「好きになってはいけない人を好きになったが故に、いろいろ振り回されてしまう」女性が『群青Dreaming』には登場します。同時に、本人も大人ですから、その状況を心の何処かで楽しんでいる。そんな風にも受け止めたことから、「恋に必死すぎず、何処か心の余裕を持った感じを歌声にも出したい」と思い、そこを心がけた歌い方をしました。
──『Coming Up』と『群青Dreaming』には、相手に振り回される女性が登場します。でも『Catcher』には、逆に相手を振り回す女性が登場していません?
富田美憂 むしろ、攻めている内容ですよね。それこそ、肉食系の女性のような…。歌詞の一節に、「一番大事な信条(ポリシー) その為に捨てて」と書いてあります。『Catcher』に登場するのは、ちょっと目の奥がギラギラとしている割と上手な女性。全体的に甘い感じに歌ったのですが、そのギラギラさも歌声の中へ忍ばせているので、ぜひそこを感じていただきたいです。
あと個人的に嬉しかったのが、『Catcher』を椿山日南子さんが手がけてくださったこと。「錆喰いビスコ」で大茶釜チロル役を演じさせていただいたのですが、この作品の劇伴とエンディング曲を手がけていたのが、椿山日南子さん。初めてオンエアを見たときから、いい意味で普通じゃない、独特の雰囲気を持った楽曲を書く椿山日南子さんの世界観にとても魅了されました。
──そこから、椿山さんにオファーをしたと。
富田美憂 今回の楽曲を決めるに当たり、いくつか集まった曲の中から選ばせていただく形を取りました。その中、聞いた瞬間から強烈に惹かれ、「この曲を歌いたいです!」と言ったのが『Catcher』でした。その時点では、誰が書いたのかわからない状態で、あとで作家さんのクレジットを見たら椿山日南子さんだったので、わたし自身嬉しい驚きを覚えました。
『Catcher』はすごく華やかな楽曲。楽器の使い方も、歌詞の言葉選びも、椿山さんにしか作り得ない世界だと思います。それを歌えたことは、本当に嬉しかったです。しかもこの曲、いい意味で派手なので、ライブ映えもしそうですからね。
「大人可愛い」をテーマにした曲も歌いたいと思い、そういう要望も出しました。
──先の3曲が、男女の妖しくも危険な恋愛模様を歌った曲たち。続く『ベンチ』からは、同じ「大人の恋愛」でも、どこかほのぼのとした温かい関係性が見えてきました。
富田美憂 『ベンチ』も、初めて聞いた瞬間から「この曲がいい」と選んだ楽曲です。先の3曲はとても”夜感”が強く、どこか非日常感が出ています。対して、『ベンチ』に抱くのは日常感。
ミニアルバムへ収録する楽曲を集める中、事前に「大人可愛い」をテーマにした曲も歌いたいと思っていたんです『ベンチ』はまさに、そのテーマにぴったりの歌。とてもキャッチーであり、何より、歌詞へ記された日常感が本当に素敵だと感じています。
──『ベンチ』を聞いたあとに『My Guiding Star』が流れることで、幸福感を覚えながら物語を終えられる。そこも、好きなところです。
富田美憂 最初、「大人の恋愛」をコンセプトに作ろうとなったとき、もともと形にしたかった『My Guiding Star』をどう作品の中へ落とし込もうか悩みました。先の3曲でドキドキハラハラしながらも、『ベンチ』が流れることでホッとした日常に戻れる。そのうえで、『My Guiding Star』に触れることで温かい気持ちで作品を聞き終える流れが出来ました。最後に『My Guiding Star』を入れたことで、この作品がより深みを持てたなとも感じています。
──『Fizzy Night』というタイトルも、作品のコンセプトにとても似合いますよね。
富田美憂 提案してくださったのは、プロデューサーの方で、スタッフさんもみんな、『Fizzy Night』という言葉を耳にした瞬間、満場一致で「これにしましょう」となりました。Fizzyには、炭酸という意味もあり、23歳の今のわたしが出せるフレッシュな大人っぽさに、そのシュワッとした言葉がピッタリだなと自分でも感じました。
──完成したミルアルバムの『Fizzy Night』、富田さん自身、今、どんな手応えを覚えています?
富田美憂 5曲収録のミニアルバムというコンパクトな形ですが、その曲数以上に充実感を感じていて、とても満足のいく作品に仕上がりました。1枚を通して聞いていただけたら、映画1本を見終えたくらいの満足感を味わっていただけるかな、って。
加えて、大人の女性という表情は、コンセプトアルバムだからこそ出せた魅力かなと思っています。「富田美憂にはこういう面もありますよ」という嬉しい意外性として見えてくる要素の多いミニアルバムだから、いい意味で聞いてビックリしてもらえたら嬉しいです。
これまでの富田美憂とはまったくイメージの異なる富田美憂を打ち出せた1枚になりました。
──2023年2月5日には、LINE CUBE SHIBUYAを舞台に「富田美憂 2nd LIVE~Fizzy Night~」の開催も決定しました。
富田美憂 具体的な内容はこれからになりますが、ここでも、「大人の恋愛」をライブの軸に据えようと考えています。そのうえで、富田美憂らしさも投影。1stコンサートで感じたことなども活かしながら、そのうえで、前回とは異なる魅力を見せていきたいなと思っています。
──1stコンサートを行った経験は、富田さん自身にもいろんな影響を与えたようですね。
富田美憂 あのときは、自分よりも年上の方々から、学校帰りで制服姿のまま来てくれた人たちなど、男女問わず、本当に幅広い年代の方々が足を運んでくださいました。印象深く覚えているのが、最前に居たお洒落な女の子。彼女は、いろんなリボンやわたしの缶バッチをたくさん鞄につけたりと、いわゆる”痛バッグ”を持っていました。そこまでわたしのことを好きでいてくれるんだと思えたら、すっごく嬉しくなりました。もちろん、その方以外でもこの日のために思いきりお洒落をしてきてくれた方々や、手作りした団扇で応援してくださる人たちなどもたくさんいらっしゃって、この日を心待ちにしてくださっていた気持ちをヒシヒシと感じながら、わたし自身もすごく幸せな時間を過ごしました。
これは、アーティストデビューをしたときからずっと感じていることなんですが、作品を背負ってみんなの前に登場するときは、その作品を好きで応援してくださる大勢の方々がいます。その時は、その作品やキャラクターに背中を押されながら舞台に立つことができ、それが安心にも繋がっています。だけど、富田美憂としての活動の場合、みんながどこまで富田美憂という一人の人間に興味があるのか…、1stコンサートではどれだけのお客さんが集まってくれるのだろうか、という不安が強くありました。
──でも、本当に大勢の人たちが集まりましたからね。
富田美憂 正直、今でもその不安は消えないですけど。でも、嬉しい自信にもなりました。
──次のコンサートも楽しみにしています。最後に、改めてミニアルバム『Fizzy Night』の魅力を聞かせてください。
富田美憂 これまでとはまったくイメージの異なる富田美憂像を打ち出せた1枚になりました。わたしはお仕事帰り、あえて目的駅の2-3駅前に降りて、散歩をしながら家路に着くのが好きで、夜の帰り道では、よく『Fizzy Night』を聞いています。夕方に散歩をするときには、『ベンチ』がとても似合うし、就寝前に『My Guiding Star』を聞いています。『Coming Up』は、ドライブをするときにも似合うと思います。わたしが日常に溶け込むようにこの作品を聞いているのと同じように、みなさんも、自分の日常の中に似合う曲たちをぜひ見つけて楽しんでください。わたし自身、本当に満足も、納得もいく作品になりました。だからこそ、みなさんの反応も楽しみにしいています。ぜひ、聴いた感想の声も聞かせてください。
TEXT:長澤智典
CONCEPT MINI ALBUM 『Fizzy Night』11.23 RELEASE
富田 美憂の「大人の恋愛」をテーマにしたコンセプトミニアルバム!
価格:2750 円(税込)/ COCX-41881
<CD 収録内容>
Coming Up 作詞・作曲・編曲:涼木シンジ
群青Dreaming 作詞・作曲・編曲:フワリ
Catcher 作詞・作曲・編曲:椿山日南子
ベンチ 作詞・作曲・編曲:佐藤厚仁
My Guiding Star 作詞・作曲・編曲:MEG.ME
2nd LIVE 開催決定!!
「富田美憂 2nd LIVE ~ Fizzy Night ~ 」
会場:LINE CUBE SHIBUYA
日時:2023 年2 月5 日(日) OPEN 16:00 START 17:00
チケット価格:全席指定 7700 円(税込)
※チケットの発売情報などは追ってお知らせされます。