「本物の音楽がここにある」——名称非公開が紡ぐ、孤独に寄り添わない新しい歌の形

2025年09月04日 | インタビュー

2025年9月14日にデビューライブを控える名称非公開。ムロ葉菜子、古森もぐ、ヒューガー、いかさんの4人で構成されるこのグループは、ムロのANCHORの音楽に対する想いから始まった。

「孤独を肯定も否定もしない」という独特のスタンスを持つANCHORさんの楽曲。それは、励ましでも慰めでもない、ただそこに在るものとして聴く者の心に寄り添う。万人受けする言葉を選ばず、取り繕わない歌詞とパワフルなサウンドが特徴的な楽曲群を携えて、彼女たちは「偶像」ではなく「人間」として、本物の音楽を届けようとしている。
元BiSメンバーのムロとヒューガー、歌い手として長年活動してきたいかさん、そしてグループ活動を夢見ていた古森もぐ。異なるバックグラウンドを持つ4人が、どのようにして集結し、何を目指して活動していくのか。デビューライブを前に、メンバー全員に話を聞いた。

ANCHORさんの曲は孤独を肯定も否定もしない

――まず名称非公開を結成することになった経緯から教えていただけますか。

ムロ 私が「ANCHORさんの曲を広めたい」と思ったのが、最初のきっかけになります。世の中には孤独に寄り添う曲がいっぱいあると思うんですけど、ANCHORさんの曲って孤独を肯定も否定もしないという点で、すごく珍しいんですよね。「泣きたきゃ泣けばいいんじゃない?」みたいな。そういう音楽を必要としている人が、きっといると思ったんです。

もぐ ANCHORさんの曲って、なかったことにしようとしたり、気づかないようにしたりした気持ちを歌詞にしてくれてるような感覚があるんですよね。それがすごく刺さるし、自分の他にも刺さるかたがいるんだろうなって。

ヒューガー レコーディングや練習で、心の底から歌えるというか。感情を乗せやすい。歌っているときに、気づいたら泣いてたなんてこともたくさんあります。

いかさん それでいて、メロディーもすごくいいんですよね。ANCHORさんの楽曲特有の力強いサウンドには、歌い手を中心に活動していた頃から、背中を押してもらってきた実感があります。


――そんな素敵な音楽を届けるメンバーは、どのようにして集結したのでしょうか。

ムロ 初めに思い浮かんだのは、もぐちゃんでした。アイドル活動もお仕事なので、ビジネスとして信頼できる人がいいなと思ったんです。もぐちゃんは、数年間毎日同じことを続けて、数字を作ってきた実績があるし、好きなアーティストや「ここの曲のここがいいよね」って感じるポイントが同じだったんですよね。一緒に活動していくうえで、音楽の波長が合うってすごく大事じゃないですか。そういった面で信頼性が高かったのが、古森もぐだったんです。

もぐ それまで1回しか遊んだことがなかったので、声をかけていただいたときは、すごく驚きました(笑)。でも、「こういう理由で、あなたを誘ってます」って話してくださった内容が、めちゃくちゃ嬉しいことばかりで。しかも、何を目標として活動するグループなのかが、すごく明確だったんですよ。とにかくムロちゃんの熱い想いに共感したし、すごくワクワクして、人生で初めて「一緒の船に乗りたい」と思いました。もともと私はグループ活動を夢見ていたので、その第一歩を名称非公開として始められるのが、とても嬉しかったですね。

ムロ ヒューちゃんは、私が所属していた2期BiSが解散して、新しく結成された3期 BiSのメンバーでした。何回かライブを観る機会があったんですけど、そのときに一番心を動かされたのが、MC、パフォーマンス、歌唱力、どれをとってもヒューちゃんだった。「この子が来てくれたら、私の目的は達成する」と確信したので、お誘いしました。

ヒューガー 声をかけていただいたのが、ちょうど「今後の活動をどうしようかな」と考えているタイミングで。実をいうと、テーマパークのダンサーさんとかも検討していて、オーディションやワークショップを調べていた頃だったんです。そんなときに、ANCHORさんの曲を聴かせていただいたら、自然と涙が流れてきて。いい意味で取り繕ってないというか、万人受けする言葉を選んでない。「世の中に向けて、こういうことを歌いたかったのかも」とハッとしたんですよね。ANCHORさんの曲を歌いたいという想いから「一緒にやりたいです」と伝えさせていただきました。


――いかさんは、どういった経緯で合流したのでしょうか。

ムロ 正直なところ、色んな候補者の方々とお会いしてきたのですけど、「ヒューちゃんのパフォーマンスを越える人じゃないと、4人目として納得がいかない」という想いが強くて、かなり迷ってしまって。そんなときに、ANCHORさんからいかさんをご提案いただきました。個人的には、10年以上前から知っているかたの名前が出て、びっくりですよ(笑)。なんなら、追っかけみたいな感じだった時期もあって……。

いかさん 「その配信見てたの?」みたいな話もしたもんね(笑)。

ムロ いかさんで知った楽曲もむちゃくちゃあるくらい。だから「メンバーにいたら凄いな」とは思いつつも、期待はしてなかったんです。すでにいろんなステージにたくさん立ってるし、ずっとひとりで歌ってきた人なので、もうやりたいことは自分で出来るんだろうなって。

いかさん 本当にタイミングが合ったというか。これから自分がどうしていきたいのかわからなくて、自主的に活動をお休みしていた時期だったんですよね。そんなときに、お声かけいただいて、まあ驚いて(笑)。ムロちゃんは何回も「来てくれると思わなかった」と言ってくれるんですけど、正直初めは自分も行くと思っていませんでした。アイドルってやっぱり若い子が多いし、今の自分の年齢を考えると「ちょっと違うかな」と思う部分もあって。それに、歌に特化してきた人生だから強烈に動けないんですよね。端的にいって、アイドル適正がないだろうなと。それを正直に伝えても、ムロちゃんは「一緒にやりたい」って言ってくれたんです。チャットでも熱い長文を送ってくれたもんね?

ムロ あははははは(笑)。

いかさん 自分のなかで整理をつけられず、お返事を戻せないでいたらバーッってメッセージが届いて。驚いたけど、すごく腑に落ちたんですよね。こんなにも熱い子とその子が集めたメンバーとなら、踏み出してみたいって。明確にやりたいことがないからこそ、自分を見つめ直したかったし、もがくならこれが最後のチャンス。けっこう勇気を出して、OKさせてもらいました。

ムロ 提案しただいたときは「ありえない、ありえない!」って思ってたんですけどね(笑)。ヤバい人が来ちゃいました!

――ムロさんとしては、最初から4人組にすると決めていたんですか。

ムロ 決めていなかったです。でも、いかさんが入った時点で、もうないなって。さすがに、いかさんを越える人を探すのは無理でした(笑)。もう確定です!

「どう歌おうかな。どうやったら届くのかな」と、すごく考えさせられた曲


――続いて、楽曲についてもお聞かせください。初めて「事勿れ主義イズダウト」を聴いたときは、どのような印象を持ちましたか。

いかさん 最初の印象は「パワフルだな」って感じでした。

もぐ みんなで曲を聴いたときに、「かっけー! すげー! つえー!」って話したよね。

ムロ ANCHORさんの曲をめちゃくちゃ聴きこんでいる身としては、ちょっと意外だったんですよ。いい意味で裏切られたというか。もっとガッツリ大衆を掴むような、ザ・エモーショナルなテイストで来ると思っていたので。

いかさん ANCHORさんの曲としては、いい意味ですごく泥臭いよね。

ムロ そうなの。でも、アウトロと呼んでいる最後の32小節は、ザ・ANCHORさんって感じがする。

いかさん 後からそこのパートが追加されて、一気に完成した感じがします。今は「これを歌いに行かないといけないんだな」って気持ちが強いですね。

ヒューガー ひとつひとつの歌詞が強いというか、メッセージ性がかなりあるので「どう歌おうかな。どうやったら届くのかな」と、すごく考えさせられた曲でした。

――振り付けをカミヤサキさんが担当されているのも感慨深いですよね。

ムロ 本当に光栄です。

ヒューガー 正式に依頼する前から「サキさんに振り付けしてもらいたいね」という話はしていたのですが、まさか本当に作品をいただけるなんて。私が3期Bis、ムロさんが2期BiS、サキさんが初期BiSという10年以上続いている関係を、名称非公開として作り出せたのも、とても嬉しかったです。

ムロ 私も!

ヒューガー サキさんに振り入れをしてもらえたのは、夢のような時間でした。

――「事勿れ主義イズダウト」以外の曲も、すでにレコーディングが進んでいるようですね。

いかさん 10曲くらいあったんだっけ。

ムロ 1週間で7曲レコーディングしました。

いかさん どれもANCHORさんの曲なので一貫性があると思うんですけど、まだ自分のなかで繋がりきっていない感覚があって。全部がわかるものでもないと思いつつも、わかるようにもがかないといけないので、ヒントを探しながら歩いていきたいですね。

――楽曲を通してANCHORさんのメッセージを繰り返し受け取ることで、思考が変化していくような感覚もありますか。

もぐ そもそも私は、めっちゃ事なかれ主義な人間で、「事勿れ主義イズダウト」を聞いたときに「めっちゃ真逆だな」って思ったんです。でも、たくさん歌ったり聴いたりしているうちに「心の奥底ではこう思っているな」って思うようになってきて。曲を通してデカいことをいうのは、誰かに向けて表現することでもあるけど、歌っている自分が曲に支えられて励まされることもあるなって感じるようになりました。

ヒューガー 繰り返し歌ったり聴いたりすることで「やっぱりこうだな」と再認識したり、「こういう面もあるな」と派生した違う思考が生まれたりもするので、曲を軸にして自分の考えが広がっていく感覚はありますね。

9月14日にはデビューライブ『名称非公開 LIVE 2025 supported by GiGO』が開催


――そんな楽曲を携えて、9月14日にはデビューライブ『名称非公開 LIVE 2025 supported by GiGO』が開催されますね。

いかさん あっという間ですね。1ヶ月後どうなるのかなって感じで、心配だし楽しみだし、心配です(笑)。こんなことをいいのかなって感じなんですけど、まだまだ足りていないところが多すぎて。どうしがみつけばいいのかなと思いながらも、そんなことを考えるなら体を動かしたほうがいいなと思って、ガムシャラにやってます。

ムロ 生きてるなって感じがしますね。こういうガムシャラ感。こんなにも「1日35時間欲しい!」って思うことないですもん。

ヒューガー お客さんから「あともうちょっとだね」と言ってもらえることが多いんですけど、私たちとしては「もっと仕上げたいな」という気持ちが強いので。「楽しみだな」って気持ちをお客さんと同じくらい持つために、自分たちのパフォーマンスに自信を持てる1ヶ月にしたいと思います。

――どのような公演になりそうですか。

ヒューガー お客さんを目の前にして、名称非公開として初めて表舞台に立てることを考えると、全ての始まりの日といっても過言ではないので。みんなの顔を見れらるのを私は一番楽しみにしていますし、「いい日だったな」って思ってもらえるように頑張るので、素敵な日になると予想します!

いかさん 今はそこに向かってみんなが突進してるだろうから、エモーショナルな1日になるって信じたいね。

ムロ たった1日のライブだけど、その人の人生を変えるつもりで挑みたいと思います。


――では最後に、これからどんなグループになっていきたいか教えてください。

ヒューガー 名称非公開は、それぞれで活動してきた期間が長く、どちらかというと今は個人にファンがついている状態なので、「名称非公開のファンです」っていう人を増やしていきたいですね。

いかさん グループより先に個人が知られているのって、なかなかないことだよね。とてもありがたいことだけど。

ヒューガー どういう形でもいいから、名称非公開という存在や楽曲自体を好きになってもらいたい。私は名称非公開をアイドルと思ってもらっても、アーティストやガールズグループと思ってもらってもいいと思ってるんです。ラベリングは受け取り手次第というか。どんな捉えかたであれ、グループを好きになってもらって、そこからメンバーを知ってもらえるのが理想ですね。そのためにもっと4人で一体化していかなきゃ。

もぐ メンバーそれぞれ得意分野が違うからこそ、それを掛け合わせて唯一無二の存在になれたらいいなと思います。もっと多くのかたに私たちを知っていただいて、名称非公開とみなさんが作りだすワクワクの輪が、どんどん大きくなっていったらいいですね。「○○といえば、名称非公開」みたいに、真っ先に名前を思い浮かべてもらえる存在になりたい。

ムロ 私は「このグループは正直だよね」って言われるようになりたいですね。Wikipediaで「アイドル」って調べると「偶像」って出てくるんですよ。でも私たちは、偶像じゃなくて人間。アーティストも芸能人もみんな、人間なので。「名称非公開は本物だよね」って言われるようになりたいし、本物の音楽がここにあるっていうのを伝えていきたいです。

いかさん ANCHORさんの詩にインスピレーションを受けてお話しをさせていただくと、綺麗事ではままならない世の中だと思うんです。たぶん昔の自分だったら、ここで「みんなの生きる意味になりたい」とか言っていたんでしょうけど、今はそれだけじゃない。まずは、ここを自分の生きる意味にして、次にメンバーの生きる意味になって、その先で誰かの生きる意味になりたい。身近な人から少しずつ手を広げていくために頑張ります。

もぐ 全国ツアーや海外公演など、まだ見ぬ景色をメンバーやファンのみなさんと見に行くために、パフォーマンス面はもちろん人としても成長していきます。

名称非公開


ムロ葉菜子、古森もぐ、ヒューガー、いかさんの4名で結成された、SNSフォロワー数120万超を誇る音楽グループ。
世論も忖度も全て蔑する歌詞と、銃弾のように飛んでくる音が特徴的なミクスチャーロックサウンドを武器に、2025年5月にデビュー。
そして、過去を背負いながら、未来へ賭けると約束した彼女らは、自身にトドメを刺すため狼煙を上げ続ける。
公式サイト:https://meisho.tokyo/
X:https://x.com/MEISHOHIKOKAI
YouTube:https://www.youtube.com/@MEISHOHIKOKAI
TilTok:https://www.tiktok.com/@meishohiokai

ムロ葉菜子(ムロハナコ)

2018年にWACK合同オーディションに合格後、アイドルグループ「BiS(2期メンバー)」で芸能活動をスタート。デビュー以来、参加したシングル3作品のうち全てがオリコン5位以内、最高位ではオリコン2位を獲得。その後、アイドルグループ「NARLOW」での活動を経て、「名称非公開」の立ち上げに参加。

Instagram : https://www.instagram.com/hnknic
X : https://x.com/hnknic

古森もぐ(フルモリモグ)」

“JKあるあるネタ”で大ブレークし、若い世代を中心に支持を集め、自身のYouTubeチャンネルでは再生数を6億回を超える国内トップクラスの人気を誇るYouTuber、TikToker。また、2024年に公開したMV「アバウトモンスター」ではセルフプロデュースを行うなどの音楽活動を経て、「名称非公開」に加入。

Instagram : https://www.instagram.com/f_mog25
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TikTok : https://www.tiktok.com/@f_mog25
YouTube : https://www.youtube.com/@f_mog25

ヒューガー

2022年よりアイドルグループ「BiS(3期メンバー)」で芸能活動をスタート。高い歌唱力とライブパフォーマンスで活躍し、シングル最高位はオリコン週間3位を獲得。2025年1月に日比谷公園大音楽堂で行われたワンマンライブで同グループは解散し、その後「名称非公開」の立ち上げに参加。

Instagram : https://www.instagram.com/hyuga_meisho/
X : https://x.com/HYUGA_MEISHO

いかさん

音楽ボーカリスト、アニメ・ゲーム声優、舞台、朗読劇などで活躍中のマルチアーティスト。
歌手としては1人で何役も演じ分ける独特な歌声で高い人気を博し、2015年1月、女子高生時代に発売した1stアルバム「ボクらの最終定理」はオリコンウィークリーチャート8位を記録するなど、その高い歌唱力を引っ提げ「名称非公開」に加入。

Instagram : https://www.instagram.com/oikasano_official
X : https://x.com/oikasano
YouTube : https://www.youtube.com/@oika3o

プロデューサー ANCHOR(アンカー)

ANCHOR(アンカー)はこれまで制作した楽曲のMVが動画投稿サイト、SNSでの総視聴数3億再生超を記録するなどいま国内で最も旬な音楽プロデューサーの一人。
様々な人気アニメ、ゲームの主題歌を担当し、近年の代表作のひとつ「地縛少年花子くん」の主題歌でYouTube再生数で2,000万再生のビッグヒットや、2022年にトイズファクトリーよりメジャーデビューを果たすと、映画「サバカン SABAKAN」で主題歌を担当し一躍話題に。
その他、ピエール中野(凛として時雨)、Nob(MY FIRST STORY)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)とともにクリエーターユニット「ZING」でも活躍中。

名称非公開 LIVE 2025 supported by GiGO

2025年9月14日(日)
ヒューリックホール東京
開場16:30 開演17:30

[前売券]
SS席:¥14,000(税込) (限定グッズ + 打ち上げ参加抽選券)
S席:¥8,500(税込) (写真5枚セット + 打ち上げ参加抽選券)
A席:¥4,500(税込) (打ち上げ参加抽選券)
B席:¥2,500(税込)(打ち上げ参加抽選券)

[主催]LEMON SODA MUSIC
[企画制作]LEMON SODA MUSIC / GiGO / 株式会社フクヤ
[制作協力]株式会社ハンズオン・エンタテインメント
[後援]KDDI

HARAJUKU POP MAGAZINE

2025年9月2日(火)発行のHARAJUKU POP MAGAZINE vol.15にも、名称非公開のインタビューが掲載されています!
目印は表紙のファントムシータ。
TAKE FREE&全国配布なので、こちらも是非チェックしてみてください♡


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この記事を書いた人

Music Worder。音楽とお酒と人が好き。 Twitter:@ayach___

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