"奇妙かわいい"pays des fées(ペイデフェ)が贈る、2021-22A/W [無重力のユートピア]展示会レポート

2021年03月29日 | アパレル


こんにちは、ライター&イラストレーターの大石蘭です。
長年コレクションの発表を楽しみにしているブランドpays des fées(ペイデフェ)が、今年初めてRakuten Fashion Week TOKYOに参加するというニュースが届きました。
ますます注目を集めているペイデフェの新作コレクションをさっそく拝見しに、2021-22Autumn/Winter展示会へ。
向かったのは、中野ブロードウェイ4階にあるアトリエ&ショップ。
デザイナーの朝藤りむさんにお話をうかがいながら、新作を見せていただきました。
ブランド創設当時からつらぬく「奇妙かわいい」というコンセプトに、マグリットや古賀春江といったシュルレアリスムのエッセンスを視覚的に取り入れた、今季のコレクション[無重力のユートピア]。
ふんわりした気持ちにしてくれるアイテムの数々を、ぜひ纏ってみて。

オリジナルコラージュのゴブラン織に釘付け

まず、今季のコレクションの中でもひときわ圧倒的なのは、オリジナルのゴブラン織を使ったお洋服です。
ゴブラン織といえば、原宿ファッション好きやロリータさんの大好物のはず!
でもペイデフェのゴブラン織は、優雅なだけではありません。
空のような海のような水色に、蛾やハナアブ、クジラの飛行船、カタツムリなど、不思議なモチーフがコラージュされている、シュールで繊細なデザイン。
見ているだけで、ここではないどこかへ引き込まれていきそう。


近くで見ると、組み合わされた色の細かさに、途方に暮れそうになるほど。
ぜひとも実物に触れて、ご覧いただきたい布地です。
ちなみに、ペイデフェのアイテムにたびたび取り入れられる「ハナアブ」は、りむさんの大好きな虫だそう。
「ハナアブはハチに擬態しているハエ。ハエなのにハチのふりしてお花にとまっていたりするの。グロテスクなものも好きだけど、かわいいものも好きな私みたい!って共感するんです」
そう聞くと、ますますハナアブが愛おしく思えてきます。


Zero gravity utopia Gobelin weave M38 coat
68,000円(税抜)8月お届け

このゴブラン織を使ったコートは、フランス軍のジャケットの形をもとにパターンを引いたもの。
「内側の背中には隠しポケットもついてるから大事なものをしまえます。これなら海外でも安心!
そして裏地はキルティング、ポケットの裏地はフリース素材だから、とってもあったかいんです」
まさに、芸術的な美しさと機能性を兼ね備えたコートです。
フロントボタンを開けて、トレンチコートのようにスタイリッシュに着こなすのも素敵。
フロントボタンを閉めれば、丸衿のように見えてかわいらしく着られます。
そしてスロートラッチを首に当てると、襟元が詰まってさらに防寒仕様に!


Zero gravity utopia Gobelin weave JSK
8月お届け
28,000円(税抜)

Balloon shirt
8月お届け
15,400円(税抜)

同じ生地のジャンパースカートは、ロリータ風な着こなしにもぴったり。
合わせたのは、きゅっと詰めた襟元とふんわり風船のようにふくらんだ袖とのメリハリが美しい「Balloon shirt」。
色展開はホワイトとグレーとピンクがあり、どれもJSKに似合うのですが、ここではピンクを合わせてとことんかわいい組み合わせにしてみました。
甘いだけじゃなく、近づいて見るとシュールな世界を楽しめるという遊び心。
「いにしえのロリータさんにおすすめ!」のコーディネートです。
同じ生地でミニスカート、マーメイドスカート、セーラーパンツ、ショルダーバッグも展開されているので、なりたいイメージに合わせて着こなしを楽しんで。

浮遊する蛾と戯れる

もうひとつのテキスタイルは、今季のテーマカラーの淡いブルーグレーに蛾が飛び交う柄。


Moth dress
8月お届け
52,000円(税抜)

そのテキスタイルを使った「Moth dress」は、衿や袖や裾、どこを見てもかわいいディテール。
やわらかくロマンティックなシルエットで、まるで蛾と一緒に遊ぶ妖精になれそうです。
とくに袖のデザインにこだわりが。
「腕が華奢に見えるけど、袖がひらひらたなびくようにパターンを引いてみたんです」
袖と裾にあしらわれたレースは、大正時代の編み機で現代に編まれたリバーレースだそう。
大正ロマンの時代にはこのレースがどんなお洋服に使われていたのか、思わず空想してしまいます。


そして首周りにも、繊細なレースが何種類も使われています。


Moth skirt
8月お届け
47,000円(税抜)

同じテキスタイルを使ったスカートは、ワッシャー加工のオーガンジーで蛾の羽根を、フリンジで鱗粉をイメージした、幻想的なデザインです。
第一印象はガーリー。近づくと毒っ気。でもさらに知ると、やっぱりかわいい小さな宝物が詰まっている、一筋縄ではいかないお洋服。
こんなお洋服が似合う女の子でいたいものです。

美しさも、履き心地もゆずれない


ribbon oxford shoes
8月お届け
36,000円(税抜)

さらに今コレクションでは、久しぶりにシューズが登場。
「これ、実は履き心地が楽なの!前後のヒールの差が1cmしかないんです。しかもサイドゴアなのでスポッと履ける!
そして先が尖ってるから足が長く見えるし、足首も細く見える。
華奢で美しい見え方にこだわりました」
実際に履いてみると、本当に履き心地の良さ、スタイルアップ効果に驚き!
安定感がありながら、いつもより伸びやかな自分の脚が嬉しくなって、どこまででも歩けそうなお靴です。

混乱のあとには、華やかな時代がくる


ペイデフェ デザイナー&オーナー 朝藤りむさん

昨年から展示会などでお話するたび、
「コロナ禍の現実とは別の世界線のお洋服をつくりたいから、マスクはつくらない」
と語っていたりむさん。
そんなペイデフェの美学が、今回のコレクションでひとつの集大成のように体現されている気がしました。

「第一次世界大戦のあとも、第二次世界大戦のあとも、ファッションが派手な時代が来てるじゃない?
ってことは、今は世界が大変な状況だけど、20年代や50年代のような華やかなファッションをみんなが着る時代が来るはずなのよ。
その波に乗るぞ、ってつもりで逆算して準備をしてるの。
ペイデフェがマスクも部屋着もつくらず、逆に生活感のないものをつくっていた理由は、実はそういうこと。私たちの時代が来るわよ!って気持ちで未来を読んでるの」

いろんな国に遊びに行くとそこの歴史とアートを調べるというりむさんは、ロシアをみてもイギリスをみても、世の混乱の後は派手で生活感のないファッションがくることを知っていたのでした。
りむさんの飽くなき好奇心と、そこから広がる知識、そして冒険のように積み重ねた経験があるから、ひるむことなく夢を見続けられる。
「今」「ここ」がすべてじゃないんだと教えてくれるユートピアは、こうして生まれるのでしょう。


Fly coelacanth dress
8月お届け
120,000円(税抜)
とてもデリケートな、飾って楽しむドレス。スカートには、人形作家の清水真理さんの手による一点もののシーラカンスが。

中野ブロードウェイで受注会を開催

2021-22 Autumn/Winter Collection [無重力のユートピア]では、ここでご紹介した以外にも、美しいお洋服や小物がラインナップされています。
中野ブロードウェイ4階のアトリエ&ショップでは、2021年4月2日(金)〜4月5日(月)12時〜17時の期間中、どなたでもオーダー可能な受注会を開催。
「お店の中の商品じゃないものに、実は文化的価値の高いものがいっぱいある」
りむさんがそう語る、小さな美術館のようなペイデフェのアトリエ&ショップに、ぜひ足を運んでみて。
Web受注会も5月9日まで開催中です。
2021-22 Autumn/Winter Collection [無重力のユートピア]

〈SHOP〉
pays des fées
pays-des-fees.com
164-0001 東京都中野区中野5丁目52 中野ブロードウェイ4階
取材・写真・文/大石蘭

この記事を書いた人

原宿を愛してやまないライター&イラストレーター。多方面で活動中。 HP : http://oishiran.com Instagram : @wireless_ran Twitter : @wireless_ran

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