GARNiDELiAのヴォーカリストとして活動中。今年5月、デビュー10周年を記念し、新たなアクションとして、MARiAは初のソロアルバム「うたものがたり」を世に送りだした。様々な作家陣が提供した楽曲と向きあったことで、MARiAは、歌い手としてさらに新しい表現の可能性の扉を開くことになった。
その手応えを、今度はライブという形でファンたちと感じあおうと、MARiAは6月5日(土)、豊洲PITを舞台に「MARiA Live 2021「うたものがたり」」と題したコンサートを開催した。同公演には、アルバム「うたものがたり」へ楽曲提供した草野華余子とTAKUYAがゲストとして参加。当日の模様を、ここに再現したい。
ライブは、MARiAのモノローグから始まりを告げた。語る言葉のひと言ひと言が、これから始まる物語へ色を付けてゆく。彼女が描く”ものがたり”は、バトンを振りながら躍る2人のダンサーへ導かれ、MARiAが舞台上に姿を現す形で幕を開けた。白い衣装に身を包んだMARiAは、まばゆいスポットライトの光を浴びながら、舞台に座ったまま、切々としたピアノの音色へ心を寄り添えるようにバラードの「隣哀感情」を歌いだした。女性の切ない心情を綴った楽曲を、彼女は気持ちを高ぶらせるように歌っていた。歌を紡ぐごと、少しずつ声に生が漲りだす。悲嘆に暮れた歌だろうと、その歌声には、確かに生や小さな光が宿っていた。
切なさと哀愁を携えながら、楽曲は「マチルダ」へ。心の奥底へジンと染み入る歌だ。MARiAは語り部となり、一人のた(さすらいびと)の物語を語るように歌っていた。いなたいブルーズな演奏が、MARiAの歌い語る物語へ深い情緒を書き加えてゆく。MARiA自身も、みずからの身体へ物語を降臨させ、今にも壊れそうな心情も見せながら切々と歌いあげていった。
鳴り響く、荘厳な鐘の音。哀愁抱いた音色が、一気に壮大さを増すと同時に、楽曲は「ガラスの鐘」へ。哀切さを抱いた曲調ながら、楽曲自体が情熱的で躍動感を持っているように、MARiAも熱を含んだ楽曲と自身の気持ちを重ね合わせ、心の内側から沸き立つ熱情を歌声やパフォーマンスに投影しながら情熱漲る姿を見せていった。後半には、それまで座って見ていた観客たちを立たせ、一緒に「情熱的な物語」を彩る仲間として迎え入れながら、ともに舞台の上にドラマを描きだしていた。
MARiAのスキッャトから始まった「手繰る夢 繋ぐ糸」は、アルバム未収録のジャジーで妖艶な、でも洗練されたエレガントさも抱いた新曲だ。幾人ものダンサーたちを従え、MARiAは夜を彩る踊り子となり、観ている人たちを妖しく挑発してゆく。心地好く跳ねる演奏も相まって、いつしか身体が、流れるリズムへ心地好く寄り添うように揺れていた。一つのブロックの中でさえ、連なった一つの物語のようドラマチックな様を見せてゆくところに、MARiAがこのライブを通して作り上げようとしていた想いを強く感じずにいれなかった。
MARiAにとって、ライブハウスの舞台に立つのは17ヶ月ぶり。「みんなの目を見て、向かい合って歌えることが、何よりも嬉しいです」と語っていたように、MCでは、喜びを隠せずに喜々としてしゃべるMARiAの姿があった。
「今まで以上に歌にフォーカスを当てて作った」のが、1stソロアルバムの「うたものがたり」。その想いを一つの形を成して届けようとMARiAは、ゲストシンガーとして草野華余子を招き入れた。2人は、舞台上に設置したバーカウンターに座り、いろいろと語りだす。ここでは、飲み会で出会ったときに「何時か曲を書かせてね」の約束を実現したことや、草野華余子がGARNiDELiAの歌をカラオケで歌っていること。草野華余子が、ソロ曲にぶつけた想い、それを受け止めたMARiAの気持ちなどが語られていた。2人の会話の中から出てきた「愛の挑戦状」という言葉。その意味は、アルバムを聞いて探っていただきたい。
次のコーナーは、MARiAと草野華余子のコラボステージへ。最初に届けたのが、草野華余子が自身の「ものがたり」シリーズ三部作として作った三部作目の「おわりものがたり」。とても激しく、でも跳ねた楽曲を、MARiAが凛々しい姿で歌えば、アコギを手にした草野華余子もギターを弾きながら、熱情した歌声をぶつけてゆく。この楽曲では、2人の力の籠もった凛々しい歌声をたっぷりと堪能できた。激しい曲調の上で、MARiAと草野華余子が歌声をぶつけあう姿は、とても熱情的だった。その姿は、女性の痛い情念をぶつけてゆくようにも見えていた。
次に披露した、草野華余子がMARiAに提供した「おろかものがたり」は、「おわりものがたり」の続きとなる曲。こちらも激しく、でも壮大な広がりを感じさせる熱情的でドラマチックな楽曲だ。ノンブレスで熱唱するMARiAの歌声へ、草野華余子が歌声を重ね、切ない女性の心情へ痛い恨みの感情を塗り重ねてゆく。2人のパワフルなパフォーマンスに触れ、身体が躍動するのはもちろん。歌詞に込めた女性の心情が、2人の吐き出すような歌声を通し、胸にグサグサと刺さり続けていった。
場面転換を担うセッション演奏を挟み、次もコラボコーナーだ。セッション演奏の終わりに舞台へ登場したのが、ギターを携えたTAKUYA。彼が奏でたメロディーが、なんとTAKUYAが在籍していたJUDY AND MARYの「そばかす」。着替えを終え、黒い衣装に身を包んだMARiAは、ガーリーな色に心を染めながら、笑顔を浮かべ「そばかす」を楽しく歌いだす。まさかの楽曲の登場に、フロア中の人たちがはしゃいでいた姿も印象的だ。
MARiAとTAKUYAは、さらにJUDY AND MARYの「over drive」も演奏。まさかのJUDY AND MARY曲のニ連打に、顔がにやけっぱなしだ。「最高のメロディー」ならぬ「最高のコラボレート」に興奮が止まない。心地好く駆ける楽曲へ2人と一緒に飛び乗り、眩しい青春という風景の中へ心はずっと飛び込んでいた。
MCでは、TAKUYA自身も「今日披露した2曲はそうとうレア」と語っていた。その姿を見れたことも嬉しいが、続いて披露したのが、アルバムに収録。TAKUYA自身のコーラスも加え、この日だけのスペシャルバージョンとして届けた「キスをしてみようか」。TAKUYAの唸りを上げるギターの音に乗せ、MARiAも最初から感情のギアを一気にトップまで上げ、高揚した歌声をぶつけてゆく。高ぶるMARiAの歌声へ、TAKUYAのクールなコーラスが豊かな輪郭を与えていた。歌が進むごと、MARiAの歌声が熱を帯びてゆくのが舞台の上から伝わってくる。その熱を感じ、フロア中に多くの拳が突き上がっていた。中盤のコラボコーナーでMARiAが見せたロックな姿も、彼女に似合う音楽のユニフォームの一つだ。
ダンサーたちのパフォーマンスを間に挟み、ライブも後半戦へ。会社帰りの飲み会の中、婚活している男女の会話が流れだした。舞台の上には、サラリーマンやOL姿のダンサーたちの姿が。流れだした「あー、今日もまた」を歌いながら、ドレス姿に着替えたMARiAが舞台へ。彼女は、女の子の恋心をリアルに映し出した「あー、今日もまた」を、結婚を夢見る女性たちへエールを送るように、明るい声を魅力に軽やかに歌っていた。サラリーマンやOL姿のダンサーたちと一緒に絡みながら歌う姿は、まるでミュージカル劇のよう。
続く「光」も、働く女性たちの等身大な気持ちを映し出した楽曲。MARiAは、身近さを覚える2曲を歌い、現実をリアルに受け止めながらも夢抱く人たちへ、歌を通して優しくエールを送り続けていた。
次に披露した「Heart Breaker」は、アルバム未発表の新曲。切ない歌詞とは裏腹に、曲調はクールながらも強いリズムを持って躍動するダンスナンバー。途中しっとりする場面もあるように、1曲の中へ緩急を付け、痛い女性の感情へドラマを与えていった。ソロアルバムの中へ収録していた曲調とは重ならないように、ここでも新しいMARiAの色を見せてくれたのも嬉しかった。
「さぁみんなで身体動かして楽しくなっちゃおうよ!!」。MARiAの声を合図に飛びだしたのが、身体を心地好く揺らす、心に光射すポップチューンの「Brand new me」。「また強くなれるよ」の歌詞のように、悲しみを拭い去り、気持ちを前向きにしてゆく歌をMARiAは届けてくれた。それまでいろんな心模様を舞台の上に描きながらも、最後に向かって心を輝きで包んでくれたことが嬉しかった。いつの間にかフロア中の人たちが無邪気な笑顔を浮かべ、MARiAの動きに合わせ大きく手を振れば、一緒に飛び跳ねていた。いいよね、心を素直に解き放ち、汚れなき笑顔になれるって。
「あー、わたしの生きる場所はここだなって。みんなに歌を届けることがめちゃくちゃ好きだなって、噛みしめながら歌ってました。今日は、みんなと向きあって楽しいライブを作ることができました。少しずつだけど、私たち、ちゃんと前へ進めているよね。どんな苦しいことも楽しいことも、必ず終わりがきます。そして、新しい季節がかならずやってきます。そんな新しい季節に向かって、これからも一緒に歩んでいきましょう」
本編最後にMARiAが歌ったのが、アルバムでも最後を飾った「ハルガレ」だ。この歌に触れていると、自然とにやけてしまう。身体が勝手に揺れていく。MARiAの高く突き上げた拳へ呼応するように、フロア中から数多くの拳が突き上がり、揺れ動く光景も圧巻だ。この景色だよな、僕らがずっと探していたのは。その景色を、MARiAがこの日、僕らのもとへ連れ戻してくれた。それはきっと、MARiAも同じ気持ちだったろう。こうやって笑顔で突き上げた大きく揺れる拳の花を、会場中に咲かせられたことが素直に嬉しかった。
カラフルな衣装姿に着替えたMARiAが、アンコールの舞台へ登場。MARiAも「わたしにとってすごく大きな一歩になったアルバム」と語っていたように、ここでは、演奏メンバーとしても参加していたサウンド・フロデューサーの本間昭光と、アルバム制作の裏側や、作品への思いについて2人が熱く語り合っていた。MARiAとしてのソロ活動は、今後もGARNiDELiAと並行し続けてゆくことも宣言していたように、これからもMARiAの活動も楽しみにしていて欲しい。
アンコールの最後に届けたのが、アルバムの冒頭を飾った「コンコース」。ソロ活動の始まりを告げた歌を最後に歌ったように、これは、「ものがたりは続く」と彼女自身が伝えてきたメッセージ。とても優しく温かい歌声で、MARiAは、訪れた人たちを抱きしめるように歌っていた。その温もりを、僕らもしっかり両手で胸に抱えながら、「今もまだ好きで好き仕方ないから~君と幸せ願うときまで」と歌うMARiAの姿に、滲むような熱い視線を送っていた。
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【ソロアルバム「うたものがたり」リリースインタビュー】
▶︎GARNiDELiAとは異なる、もう一人のMARiAの顔に触れてみたら…。
TEXT:長澤智典
うたものがたり
2021.5.26 Release
うたものがたり
歌劇場「GARNiDELiA」の初演から10年。以来初となる独り舞台がここに開演。
これまでのMARiAが表現してきたこと、そしてこれからのMARiAが伝えたいこと。
いちアーティストの過去と未来が目の前で交差するような音と時間の共有。
歴代のトップミュージシャンを作家陣に迎え、10章のラブソングで綴られた『うたものがたり』。
【初回限定盤】
¥4,400(税込)
PCCA-06037 CD+Blu-ray
※Blu-rayにはMVほか収録予定
【通常盤】
¥3,300(税込)
PCCA-06036 CD ONLY
収録曲共通
<収録曲>
1.コンコース
2.憐哀感情
3.ガラスの鐘
4.おろかものがたり
5.マチルダ
6.キスをしてみようか
7.あー今日もまた
8.Brand new me
9.光
10.ハルガレ
全10曲収録
「うたものがたり」楽曲配信
https://lnk.to/utamonogatari
「コンコース」楽曲配信
https://lnk.to/Concourse
MARiA
MARiA特設サイト:https://www.garnidelia.com/special/maria/
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