アニメ「デート・ア・ライブⅣ」のオープニングテーマ「OveR」を歌っているのが、声優アーティストの富田美憂。同楽曲を収録したシングルを、4月20日に発売。今回は、声優ではなく、テーマ曲を歌う一人のアーティストとして作品に参加。彼女が、どんな想いを胸に「OveR」を歌ったのか話を伺った。
ひと皮剥けた富田美憂を「OveR」に反映することができた
──富田さんは、これまでにもアニメ「放課後さいころ倶楽部」のOPテーマ「Present Moment」、アニメ「無能なナナ」のOPテーマ「Broken Sky」と、アニメのテーマ曲を歌ってきました。2本の作品とも声優としても作品に携わってきましたけど、今回の「デート・ア・ライブⅣ」ではOPテーマの「OveR」を歌うアーティストに専念。ご自身が出演していない作品でテーマ曲を担当するのは…。
富田美憂 初めてになります。「放課後さいころ倶楽部」のときは、3人の主人公の一人という役所もあって、自分の演じているキャラクターも明確につかんだうえで歌いました。「無能なナナ」のときも、出演していることで物語の全容をとらえながら歌っていました。でも今回は、「声優の富田美憂が歌う」のではなく「富田美憂というアーティストが作品のテーマ曲を担う」形。物語の幕開けを飾る曲であり、その楽曲が作品の導入部にもなるわけですから、その責任は重大だなという気持ちで臨みました。
──「OveR」は、とても力強く躍動した楽曲。聴きながら、胸を熱く掻き立てられました。
富田美憂 今回、先にワンコーラス分のデモ楽曲をいただき、最初にわたしに合うキーチェックから入りました。そのうえで一度仮歌を入れ、楽曲アレンジを施し、本番のレコーディング、という流れで楽曲制作を進めました。自分にしっくりくるキーで歌わせていただけたし、同時に歌う準備もじっくり時間をかけてできたことで、より深く「OveR」へ入り込みながら歌えたのはとても良かったなと思います。
──バタバタすることなく、腰を落ち着けてレコーディング。とても理想的な環境での制作だったんですね。
富田美憂 すごくいい環境でした。しかも実は今回のレコーディングは、1stアルバム「Prologue」を作り終えた翌週には始めていました。制作陣も、1stシングル「Present Moment」のときからずっと携わっているチームの方々。わたしも、チームの人たちも、アルバム「Prologue」を作り上げたことで、アーティスト富田美憂の新たな可能性から、超えるべき課題まで、いろんな面を見つけることができました。それをつかんだうえで新たな作品作りへ挑めたので、ひと皮剥けた富田美憂を「OveR」に反映することができたのではないかと感じました。
1stアルバム「Prologue」が、ようやくアーティスト富田美憂としてのスタート地点に立てた作品だとするなら、「OveR」は、そこから一つレベルアップした、新しい富田美憂を導き出せた楽曲になっているのではないかなと思います。
──しかも携わったのが、人気シリーズ「デート・ア・ライブ」最新作の主題歌ですからね。
富田美憂 「デート・ア・ライブ」シリーズは、歴史のある作品。曲を手がけたのは、過去3作品でもOPテーマを作ってきた作家の方々。作詞と、作曲・編曲を担うお二人が、作品の世界観へ寄り添うのはもちろんですが、「富田美憂をイメージしてつくった曲」とお伺いしていて、最初からわたしが歌うことを前提に曲を書いてくださいました。それが嬉しかったのと同時に、「あっ、こんなにも強い曲なんだ」という印象も受けました。「OveR」は、すごく「デート・ア・ライブ」らしい世界観を描いた楽曲ですよね。
──そこは、強く感じました。
富田美憂 過去、2作品アニメのOPテーマを歌わせていただきましたが、今まで歌ってきた中でも、一番ストレートなアニソンだと感じました。ただ激しくてエネルギッシュなだけではなく、Aメロに静けさを覚えれば、Bメロには感情が爆発しそうな兆候を見せるなど、1曲の中にいろんな感情の起伏や表現が詰め込まれています。「OveR」はとくに、歌詞を追いかけながら聞いてもらえたら、より表情の変化を楽しんで聞けると思います。何より「デート・ア・ライブⅣ」にピッタリというか、本当にしっくりはまる楽曲になりました。
ファンの方々から「この歌、すごく「デート・ア・ライブ」っぽいよね」と言われたときは「あっ、大成功!」と嬉しくなりました。
──「OveR」の歌詞は、「デート・ア・ライブⅣ」の世界観へ寄り添った内容ですよね。
富田美憂 歌詞は、とても「デート・ア・ライブⅣ」感にあふれています。わたしの1stシングルになったアニメ「放課後さいころ倶楽部」のOPテーマ「Present Moment」を歌ったときには、作品の世界観へプラスする形で、デビューに向けての富田美憂のフレッシュな気持ちを混ぜ合わせ歌いました。ですが「OveR」では、「デート・ア・ライブⅣ」の世界観のみを歌っています。わたし自身も、どれだけ「デート・ア・ライブⅣ」の世界観へ自分を寄せて歌えるかを求められたように、そこが嬉しい挑戦でしたし、「デート・ア・ライブⅣ」ファンの方々から「この歌、すごく「デート・ア・ライブ」っぽいよね」と言われたときは、「あっ、大成功!」と嬉しくなりました。
歌詞の内容ですが、「デート・ア・ライブⅣ」にはたくさんのヒロインたちが登場します。「OveR」は、どのヒロインに当てはめて聞いてもおかしくない内容。わたしは、時崎狂三感の強い歌詞として受け止めました。「OveR」の歌詞は、観る人それぞれに解釈の広がる内容であり、話数が進むごとに曲のとらえ方にも変化や深みの出る楽曲。わたしも毎週一人の視聴者として「デート・ア・ライブⅣ」の世界観へ触れ、解釈を深めながら「OveR」を聴くことを楽しみたいなと思っています。
──今回、「OveR」のMVも制作。CDにはMVとそのメイキング映像を収録したDVDも付いています。MVの中で、美憂さんが口紅を唇からはみ出して引くシーンがありますよね。あれ、すごく印象深く見えました。
富田美憂 今回のMVのテーマになったのが、タイトルに紐付く形で「OVERする(=“越える”“はみ出す”“あふれる”など)」ということでした。その一つとして、口紅をはみ出すように引くこともやらせていただきました。普段、口紅を塗るときって、鏡を見ながら引きますよね。だけどMVでは、カメラを見ながら、感覚だけで、唇から大きくはみ出すくらいに口紅を引きました。見栄え良くオーバーに口紅を引くのが意外と難しくて、じつは何度も撮り直したうえでのベストショットを入れてます。
──無数の炎に囲まれて歌う場面も強烈なインパクトを放っていましたけど。至近距離での撮影は、かなり熱かったんじゃない?
富田美憂 炎を使った撮影は、正直怖かったです(笑)。引きの映像のときは炎も遠いからいいんですけど。自分の顔のアップを撮りながら、そこへ炎も絡めるときは、炎自体をわたしに近づけないと画面に入らないからと、炎も近づけたうえで撮影をしました。炎を使って歌うシーンでは大きな動きを求められたので、炎に対しての恐怖心を捨てるまでにはどうしても時間がかかってしまいましたね。しかも、すごく熱かったですし(笑)。だけど、映像を観たら、楽曲の持つ躍動感ともすごく合っていたから、頑張って良かったです。
──撮影した場所は、とても広い廃墟のような場所ですよね。けっこう寒かったんじゃないですか?
富田美憂 撮影した時期が真冬で、とても寒かったです。メイキング映像を見てもらえたら、わたしの口から白い息が出ているのも確認できると思います。他にも、映像にはドミノを倒す場面が出てきます。わたしが、次の場面の撮影まで、ストーブの前で暖まりながら休憩をしていたとき、すぐ近くで、寒さを我慢しながらスタッフさんがドミノを一個一個並べていました。その姿を見ていたからこそ、「あの努力を繰り返えさせることがあってはいけない」「絶対に失敗は許されない」といった気持ちが生まれ、プレッシャーも感じたんですが、本番では一発OKで決めることができました。
今回の「OveR」のメイキング映像には、わたしの撮影シーンのほかにも、スタッフさんが用意してくださったいろんな小物も映っていたりするので、細かいところまで見てもらえたらなと思います。
大切な人のことを思って「ねえ、君に」を聴いてると、きっと会いたくなる
──シングルのC/Wに収録した「ねえ、君に」も、「デート・ア・ライブⅣ」の世界観と重ねあわせ聞いてしまいますけど。実際には、「デート・ア・ライブⅣ」とは別の世界観を持って作った楽曲だったのでしょうか?
富田美憂 そうです。「今回のC/W曲をどうしよう」と考えたとき、「OveR」がかなり激しめの楽曲だから、C/Wは逆に温かいバラードにしたいね、という話になりました。今まで、わたしがバラードを歌うときには割と失恋系の曲を歌うことが多かったから、今回は「幸せが滲み出る温かいバラードにしよう」と。わたし自身、「ねえ、君に」を歌いながら思っていたのが、愛情という面では「OveR」に繋がるものがあるなということ。
「ねえ、君に」は、家族や恋人、友人、お世話なっている方など、大切な人のことを思って聞いていただけたらなと思います。そういう人のことを思って「ねえ、君に」を聴いてると、きっと会いたくなると思います。
──確かに。
富田美憂 「OveR」は非日常の世界を歌った楽曲ですけど。「ねえ、君に」は、歌詞へ「「ただいま」と「おかえり」がこだまするように」とも書いているように、普段の生活と重ね合わせ、想いを感じれる楽曲になっています。
──完成した4thシングル「OveR」、今の美憂さんにとってどんな1枚になりましたか?
富田美憂 まずは、達成感をすごく感じています。作品を重ね、アーティストとしての経験を重ねてきた中で、今回出会ったのが「OveR
でした。結果、「富田美憂が新しい階段を一段のぼれた作品になった」とわたし自身感じていますし、そう感じてもらえたなら嬉しいです。もちろん、「デート・ア・ライブ」シリーズが好きな方々にも、作品に寄り添う形で楽しんでいただける楽曲にもなっています。
アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪」がなかったら、富田美憂は声優にもなってないし、歌も歌ってない
──話はガラッと変わります。富田さんの人生に大きな影響を与えた楽曲や作品があれば教えてください。
富田美憂 いろんなところで言ってますが、アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪」(以下、「うたプリ」)がなかったら、富田美憂は声優にもなってないし、歌も歌ってないんだろうなと思います。
わたしが「うたプリ」に出会ったのは、まだ小学生の頃でした。この作品を通し、「1曲を作ることの大切さと大変さ」や「曲には、その人の中身が如実に出るもの」「歌にはそういう楽しみ方もあるんだ」と教えてもらいました。「うたプリ」は、大人になった今でも好きな作品ですし、「「うたプリ」ありがとう」という気持ちは、今も持っています。
──「うたプリ」に出会ったことが、富田さんが声優を目指したきっかけになったわけだ。
富田美憂 そうですね。でも歌や音楽を好きになるきっかけになった作品と言ったほうが正しいと思います。作品に出てくる(月宮)林檎先生の言った「歌は技術も大事だけど、心が一番大事」という言葉は、まさに名言。今でも、その言葉を自分の中で大切にしています。それくらい、かなり強いインパクトをわたしに与えた言葉だったなと思います。
──声優になりたい気持ちが強くなったのは何時頃からでした?
富田美憂 「うたプリ」を好きになった頃から、そういう気持ちもあったと思うんですけど。わたしが今の事務所へ所属するきっかけになったのが、「声優アーティストを育成する」オーディションへ挑戦したことでした。
当時のわたしは歌が好きで応募しました。声優は、レッスンも受けたことのない超ど素人状態でオーディションを受けたので、そのときの審査で渡された原稿を声に出して読むのが、初めて演技に触れた瞬間でした。そのときに、「あっ、演じるって楽しい」とお芝居の楽しさを発見できたことが、今に繋がりました。
──結果、今は声優としての実力も、知名度もグングン上げています。
富田美憂 わたし自身は、役者としてのお仕事も、歌のお仕事も、それぞれ100%の力でやっています。そこはこれからも、どちらが優先といったことではなく、同じように情熱を注ぎながら続けていきます。
──今はとくに、役者・声優としての評価をすごく高めていますよね。
富田美憂 役者もアーティスト活動も、どちらも違った楽しみ方があるなとわたしは感じています。長く役者を続けていく中で、わたしが目指しているのが「演技」がしっかりとできること。「この作品に富田さんがいるから、間違いなく安心だよね」と言っていただけるくらい、声を使う仕事のプロとしてのプライドを持ってやっていきたいです。それは、歌の活動にも言えること。わたし自身は、職人気質な存在になっていけたらなと思っています。
──美憂さん、ファッションへのこだわりはどうですか?
富田美憂 もちろん、流行も大事だと思っています。ときには、まわりの方々から「こういうメイクや格好をすると似合うと思うよ」とアドバイスをいただくこともあります。でも、わたしは「自分が身につけたいファッションやヘアメイクでいたいな」といつも思っています。ショートヘアでいることもその一つかも。「私はこの格好が好きだからしています」と、胸を張って言える自分でありたいです。
──美憂さんは、シングルやアルバムなど、作品ごとにいろんな自分になれることも楽しんでいますよね。
富田美憂 そうなんです。今回の「OveR」でも、ブルーの服に合わせ、メイクさんが「青いアイラインを引いてみよう」と、普段のわたしならやらないメイクもしてくださったように、作品ごとに合わせたファンションやヘアメイクを楽しめるのもすごく楽しいですよね。そこがアーティスト活動をしてゆくうえでの楽しみの一つだとも思っています。
──ファッションやヘアメイク次第でいろんな自分になれる。そこが、素敵なところだなと感じます。
富田美憂 ほんと、そうですよね。わたし、もともと写真や動画を撮られるのが苦手なのですが、アーティストのお仕事を始めてから、ちょっぴりですが自分に自信を持てるようになりました。
──自分磨きも常日頃から心がけています?
富田美憂 そうですね、まわりから綺麗に見られたいと思っていますが、それよりもわたしの場合、自分のモチベーションをあげるために自分磨きを楽しんでいるところがあります。毎月一回ネイルを変えているのも、「爪、可愛いね」と言われるだけで、例え嫌なことがあって落ち込んでいても「爪が可愛いって言われたし、まぁいいか笑
と、自分のモチベーションを上げてゆく力に変えていけるからです。毎月美容室へ通って伸びたぶんだけ切って、しっかりトリートメントをしてもらうのも、今の好きな髪形をずっとベストな状態で保っていたいから。
3rdシングルの「Broken Sky」のときに、作品に合わせ髪の毛を赤く染めたんですけど、そのときにお世話になった美容師さんが大好きになり、今や、すっかりその方にわたしのヘアスタイルをお任せしています。そうやって、自分磨きを影でいろんな方々が支えてくださることで、今の富田美憂が成り立っています。そこも、みなさんには本当に感謝しています。
TEXT:長澤智典
「OveR」
2022.4.20 Release
富田 美憂4th SINGLE 「OveR」
アニメ「デート・ア・ライブⅣ」オープニングテーマ
<初回限定版>
CD+DVD
COZC-1862-3
¥2,090 (税抜価格 ¥1,900)
<通常版>
CD
COCC-17956
¥1,430 (税抜価格 ¥1,300)
<CD 収録内容>
M1.OveR 作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:坂部剛
M2. ねえ、君に 作詞・作曲・編曲:遠藤直弥
M3.OveR (Instrumental)
M4. ねえ、君に(Instumental)
<DVD 収録内容>
「OveR」ミュージックビデオ
メイキング映像
富田美憂(とみた みゆ)
11月15日生まれ。アミューズ所属。
代表作(一部抜粋):
「アイカツスターズ!」(虹野ゆめ役)
「ガヴリールドロップアウト」(ガヴリール役)
「となりの吸血鬼さん」(ソフィー・トワイライト役)
「メイドインアビス」(リコ役)
「ぼくたちは勉強ができない」(緒方理珠役)
「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」(伊井野ミコ役)
「戦闘員、派遣します!」(キサラギ・アリス役)
「バトルアスリーテス大運動会ReSTART!」(シェリイ・ウォン役)
「アイドルマスター シンデレラガールズ」(砂塚あきら役)
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