先に、公式で記されたメッセージを届けたい。
詩(うた)でつながる
仲間がいる。誰かとつながるって、ちょっと面倒だ。
フォローしたりされたり、外されたり。
エアコンから吹き出す23度の風、
電気を消してヘッドフォンをつける。
日本中のワンルームがライブ会場へと変わる。
「たまたま同じ時代に、同じものを観てるだけ」
でも、そんな関係を私はこう呼びたい。
詩(うた)でつながる仲間がいる、と。
とても胸惹かれる言葉だ。7月11日(日)、様々なボカロPと歌い手がコラボレートし、スペシャルな「詩(うた)で繋がった仲間どうし」による新曲を披露するライブをオンラインで発信してくれた。その日の模様を、ここへ記したい。
秋山黄色
イベントのトップを飾ったのが、応援アーティストとして登場した、新世代のギターヒーローこと秋山黄色。クールながらもハネた演奏の上に、秋山黄色のエモーショナルな歌声が重なりあう。とても心地好くも緊張感にあふれた「Caffeine」の演奏だ。触れているだけでヒリヒリとする感覚が肌を突き刺す。でも、それが心地好い刺激となって胸を刺激する。その姿から目を外せない。演奏が進むほどにエモさを増せば、その刺激に心が嬉しい悲鳴を上げていた。
続く「モノローグ」で秋山黄色は,振幅強い高揚した演奏を魅力に、観ている人たちの心を釘付けにしてゆく。エモーショナルという言葉がとても似合う歌い手だ。心地好い緊張感と熱を持った歌声と演奏が、強烈に心を引き寄せる。衝動に満ちた彼の世界に呑み込まれたが最後、もうここから離れるなんて出来やしない。
「繋がるのがめちゃめちゃ今重要なんだと思います。今こそ大事にしたいと思って応援にきました。一緒に繋がってください」と語った秋山黄色の歌声が、胸に熱い。
最後に秋山黄色は、「ホットバニラ・ホットケーキ」を演奏。画面にリリックを乗せながら、彼のライブは進んでゆく。緩急を効かせた歌声と演奏が感情を直撃するように突き刺さる。3曲通して秋山黄色が描き出したスリリングでエモーショナルなライブに、気持ちが熱く、熱く、痛く揺さぶられた。
和田たけあき×松下
エントリーアーティストとしてトップを飾ったのが、和田たけあき×松下。披露したのが、暴力で繋がってしまう男女のラブソングを描いたドロドロの歌「あぶく」。
重厚かつスリリングな音が飛びだした。病みの世界でセッションしてゆくような、妖しくも痛い世界が画面の向こうから飛び込んできた。跳ねたリズムがスリリングながらも心地好さを導き出す。松下の妖艶な、でもリミッターを壊した歌声が、ジャジーでスリリングな歌謡ムードの世界の中で、妖美な踊り子のような様として心へ飛び込んでゆく。うらぶれた世紀末のキャバレー小屋で、痛い感情をねっとりと、影を背負いながらも華やかにぶつける。そんな見てはいけない宴の様を見ているような感覚を覚えていた。病んだ感情が、聞き手の感情にもズケズケと入り込んでゆく。それが、たまらなく刺激的だった。
buzzG×RIRIKO
「盲目の恋」「見えないものを見ようとしない」をテーマに、2人の出会いの奇蹟が生み出したbuzzG×RIRIKOが作り上げたのが「ウルトラレア」。希望だけを歌うわけではないところが、この曲のポイントだ。
RIRIKOの秘めた歌声に凛々しく絡まるbuzzGのギターのカッティング音。演奏は少しずつ、でも着実に熱を上げてゆく。「言葉を知って」とRIRIKOが熱く歌いだしたとたん、楽曲は一気に熱とパワーを上げだした。とてもエモーショナルだ。でも、そのエモさは心の内側からグワーッと沸き上がってゆくマグマのよう。けっして大きく吹き上がるわけではない。むしろ、熱い感情の脈動が、揺れ動くRIRIKOの歌声を通して光と影、二つの表情を見せながら形を成してゆく。熱を発するというよりも、ものすごい熱量を抱いた楽曲を2人は演奏を通して吐き出してゆくようだ。ジワジワと染み込んでいた歌が、何時の間にか心の中で大きな存在となって自分を支配していた。いつしか2人の世界に取り込まれていた。
OSTER project×ゆらぎ
「自分の弱さ」「劣等感」も、外からみたら同じかも知れないというテーマを記した「アズールブルー」を、同じ意識を抱いたOSTER project×ゆらぎが「劣等感」を肯定し、前へ進む力に変えて表現。
とても爽やかだ。疾走する楽曲が、心に抱えた劣等感を掻き消し、吹き飛ばすように胸に響き渡った。OSTER project×ゆらぎは、夏を感じるとても晴れたお洒落な楽曲に乗せ、すべてのネガティブな感情を肯定し、輝く青い世界へ変えてゆくように歌い、演奏していた。晴れた歌声の中へ、痛い感情の揺れを映し出すゆらぎの歌声が、OSTER projectの手によって、爽やかな力に塗り変わる。ただただ真っ青な世界の中へ飛び込み、2人と一緒に、この歌を通して病み/闇を消し去りたい。ただ解き放つだけではなく、みずからの気持ちに向きあったうえで、2人は痛みを光に変えようとしてゆく。その2人の想いが重なり、最後には輝きに変わっていた。ゆらぎの、伸びのある歌声もスカッとしてて心地好かった。
+α/あるふぁきゅん。
応援アーティストとして登場したのが、+α/あるふぁきゅん。ライブは、ジワジワと熱を上げるようにエモーショナルな歌声を響かせながら「アリピプラゾール」を歌い、幕開けた。楽曲自体は、ジワジワと熱を上げてゆくスタイル。その上に乗る+α/あるふぁきゅん。の歌声もジワジワと熱を上げてゆくのだが、その声自体へすでに熱した想いが詰め込まれていた。だからこそ、+α/あるふぁきゅん。の歌声を通して伝わる歌詞のひと言ひと言が、胸に鋭いナイフのようにグサグサッと突き刺さる。気持ちの内側をえぐりだすように歌うその声に、心が捕らわれ、動けない。
「これから新しい場所へ挑もうとしている方。もし迷いがあったら、ときには昔の自分を見つめ直してみるのもいいことだと思います」。その言葉に続いて歌ったのが「キミが私」。ダークに。でも弾む演奏の上で、+α/あるふぁきゅん。は心を未来に向けながら想いを飛ばしていた。痛い心の声を吐き出すことで、彼女はネガティブな色を脱ぎ捨て、光になろうとしていた。けっして輝いているわけではない。輝こうとするために弱い自分と向きあう。だからこそ、その歌声が気持ちを強く揺さぶってくれた。どんどんエモーショナルに塗り変わる歌声も、とても魅力的だ。
「人生って、良いときもあれば悪いときもある。どちらも、同じぶんだけの時間を擁するんですよね」「今苦しい人も、明日頑張ろうを繰り返せば、何時かいいことが起きると信じてください。絶対にいいことは起こります。みなさんが素晴らしい未来を手にすることを祈っています」
最後に+α/あるふぁきゅん。は、「ソノサキ」を歌唱。シルエット姿の彼女が囁くような歌声と熱情した声色を交錯させながら、いろんな感情をカラフルなグラデーションに変え、力や希望として聞き手の胸に降り注いでくれた。その声は、触れた人たちの希望の炎として心の中で燃え広がりだしてゆく。心の炎を大きくするほどに、力強く前へ踏みだせそうな気持ちになれる。痛い痛い感情のその先へ進むためにも、この歌を相棒に踏みだしたい。絶望の淵から飛び立とうとするような+α/あるふぁきゅん。の歌声やパフォーマンスに、僕らは確かに力を受け取っていた。
40mP×こはならむ
「涙」が今回の楽曲のキーワード。「想いを伝える勇気」をテーマに、40mPは「涙を歌声にしたような声」を持つこはならむを歌い手として指名。それで生まれたのが「涙の融点」。
想いを届けるように、40mP×こはならむは、キラキラとした音の電波に乗せ、こはならむが言葉を優しく伝えるように歌いかける。その楽曲は、胸をワクワクと弾ませる輝きを秘めていた。その輝きを少しずつ引き出しながら、こはならむは歌う。その歌声と演奏は、サビ歌を通してカラフルな音を一気に花咲かせてゆく。まさに、心にときめきを与える極上のポップナンバーだ。2人とも、心に輝きを持っている。いや、心に秘めた想いを輝きに変えようとしていた、気持ちに心地好く染み渡る40mPらしい素敵なポップ感が重なり合い、それが音や、心のきらめきに変わっていた。涙を吹き飛ばすような歌だ。ずっと胸に抱いて、光に包まれていたい歌だった。
八王子P×しゅーず
「一人の相手を愛してどんどんはまっていく」恋愛をテーマにした大人の恋を歌ったのが、八王子P×しゅーずの手がけた「モノクローム//ディストピア」。
冒頭からドキドキとした緊張感が走った。しゅーずの歌声が耳へ飛び込んだとたん、そこには触れてはいけない世界へ踏みだしたような、危険だけどゾクゾクッとした感覚を覚えていた。そう、見てはいけない世界にほど心は惹かれてゆく。それが自分事ではなく他人事だからこそ、強い好奇心を持って耳を傾けながら、いつしかクールでスリリングなダンスミュージックに乗せ、心の裏側を告白するように歌うしゅーずの歌声や歌詞を追いかけていた。色でいえばモノクロだ。だからこそ、そこからいきなり見えてくる歌声の差し色が強烈に心へ突き刺さる。何時の間にか、その危険な恋の世界へ共に身を落とし、心地好く溺れていた。それがたとえ不幸へ繋がろうとも、今は、モノクロームなダンスビートの世界へ心地好く溺れたい。なら、そのまま溺れてしまえば、それでいいじゃない!!
針原翼×koyori×遥羽
「一歩踏みだす勇気」「何かにチャレンジすることを後押しする歌」「迷っている人の背中を押す歌」を、遥羽と同世代に届けたくて作ったのが、針原翼×koyori×遥羽が手がけた「ハルと宝石」。
遥羽の歌声から楽曲はスタート。彼女の歌声から感じるのは、とても輝きを持っていること。その歌声自体が青空のような解放感と爽やかさを持っている。だからこそ、気持ちの内側をぶつけるように綴った歌詞が、一気に光を帯びて輝きだす。遥羽の歌声に、晴れやかに駆け抜ける楽曲に触れながら、心に眩しい太陽の光が降り注ぐ感覚を覚えていた。遥羽の歌声は、どんなくすんだ想いにだって光を与えてゆく。だから、弱さを知ったうえで前へ進もうとする楽曲が、さらに輝きを放ちながら、心のスクリーンに映し出された物語の中で羽ばたきだすのかも知れない。青春という言葉を覚える楽曲だ。それが少し不器用だからこそ、前を向いた気持ちに熱いエールを送りたくなる。遥羽の歌声に背中を推してもらいたくなる。
ひとしずく×やま△×PARED
最後に登場したひとしずく×やま△×PARED。「ナンセンスゲーム」に込めたのは、「人生に悩んでいる人へ捧げる歌」。このチーム、会社を辞めて音楽の道へ進んだ人たちばかり。その想いが共鳴しあった。
挫折…とは違う。自分の道を間違えようと、改めて向きあうことで、しっかりと自分の道を見いだせればいい。それが現実とかけ離れた夢だとしても…。そんな必死に生きる人への応援ソングを、ひとしずく×やま△×PAREDは軽快に弾むファンキーな楽曲に乗せ、アゲアゲな気分で届けてきた。ネガティブな感情だからこそ、それをガンガン前向きに変えようとこのチームは歌にしていった。PAREDのがなるような歌声が、パーティ系の楽曲と心地好くクロスオーバー。ダミ声で歌うPAREDの歌声が、心の叫びとして胸に響き渡る。刺のような言葉の数々が、熱々とした跳ねた楽曲によって熱せられたことで、それが情熱とパワーを持った楽曲として耳や胸に飛び込んできた。どんなに心ふさごうが、前向きにはっちゃけようぜ。そんな無条件に力を与えてゆくライブをひとしずく×やま△×PAREDは届けてくれた。
ツユ
応援アーティストとして登場したのが、ツユ。ライブは、気持ちを馳せる「やっぱり雨は降るんだね」からスタート。淡々と歌いながらも、気持ちを騒がせる礼衣の歌声が、胸に心地好く響き渡る。次第に気持ちが上がってゆくのも、彼女の歌声がしっかり熱を持っているからだ。言葉を次々と突きつけるように歌う声に乗せ、次々と流れる歌詞を追いかけたくなる。歌声と歌詞と楽曲が心地好いトライアングルを描きながら物語を作りあげる。その世界に浸っていることが、とても心地好い。ぷすのエモーショナルなギターも、同じく耳に心地好かった。
続く「あの世行きのバスに乗ってさらば。」 でも、ライブが生み出した心地好い熱と気持ち弾ませる浮遊感に触れながら、駆けるような演奏に刺激を感じながら、礼衣の歌声を通して綴られる物語を耳で追いかけていた。とてもリズミカルなノリを持った曲たちだ。感情と演奏と想いがつねにシンクロしながら、胸揺さぶるドラマを作り続けてゆく。だから、そのライブを夢中で追いかけたくなる。
勢いを継続したまま、ライブは「くらべられっ子」へ。緩急抱いた、でもエモーショナルな楽曲だ。歌声×歌詞×演奏が三位一体となり、聞き手の意識も心地好くアゲてゆく。その歌詞が病んでいようが、やっぱしその演奏は、エモく胸に響く。だからその姿を、目を逸らさずに見ていたのかも知れない。ドラマを描くように、ツユは3曲を立て続けに披露し、見ている人たちを夢中にさせていった。
この日のエントリーユニットの中から優勝者を決めるということで、審査のうえで選ばれたのが、OSTER project×ゆらぎに決定。とても未来の音楽シーンが見えるイベントだったように、ぜひ、第二弾の開催も期待したい。
TEXT:長澤智典
つながる詩の日
「つながる詩の日」は、インターネット上で創作活動をされているボカロPと歌い手に参加いただき、それぞれのコラボレーションによって生み出される新しい音楽との出会いを皆さまにお届けいたします。
つながる詩の日のライブ当日は、歌い手とボカロPがペアとなって、オリジナルソングを披露。
視聴者による事前の楽曲人気投票と当日の有識者による審査により優勝ペアを決定し、優勝ペアは更なる飛躍をahamoがサポートします。
つながりが生み出す、ネクストアーティストの誕生の瞬間を見逃すな!
現在、ahamo公式YouTubeチャンネルにて、エントリーユニット7組のライブ・パフォーマンス映像(アーカイブ動画)を特別公開中!
MCのヒャダイン×貴島明日香、審査員の大石昌良・神前 暁(MONACA)・ミト(クラムボン)による楽曲の解説やトークも必見です。
※応援アーティストのライブ映像は、誠に恐れ入りますがアーカイブ配信はございません。
※こちらの動画は2021年10月10日までの限定公開となります。
Official Site:https://ahamo.com/special/tsunauta/
YouTube:ahamo公式YouTubeチャンネル