ソロシンガーのKayaが、8年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム『ROSE』を6月にリリース。これまでモチーフにしてきた『薔薇』をメインテーマに、EDM、シティ・ポップ、ヴィジュアルロックなど、バラエティ豊かな楽曲を収録。先日(6月11日)には、日本橋三井ホールでKaya 15th Anniversary Live Show『Rose Addict』を開催。ライヴで感じた思いや、16年目に突入した現在の心境、アルバム制作エピソードなどを聞きました!
それぞれのアーティスト性に特化した百貨店のようなアルバム
──8年半ぶりとなるフルアルバム『ROSE』が6月にリリースされましたね。
Kaya これまでの活動の中で出会ってきた様々なジャンルのアーティストの方に楽曲提供をしていだいて、EDMや、シティ・ポップ、ヴィジュアルロックなど、バラエティ豊かな曲が揃いました。最初は、作品に統一性がないと、取っ散らかってしまって良くないかなと思ったのですが、今回はコンビニではなく百貨店に出来ると思えたので……。
──百貨店ですか?
Kaya はい。それぞれの商品に対して100%特化したお店が集まる百貨店みたいに、色々なジャンルの曲を集めても1つの作品に仕上げることが出来るという自信がありました。数年前には考えられなかったけれど、15年の間に様々な歌唱法を学んできた今だからこその挑戦でもありました。
──楽曲はどのようにオーダーをしたのでしょうか?
Kaya 曲調やコンセプトを聞いて下さる方もいたんですけど、基本的には「Kayaをイメージして作って下さい」とお願いしました。あとは、ちょっとした希望を伝えた方もいるんですけど、たとえば、アーバンギャルドの浜崎容子ちゃんには、最近シティポップが流行っていますけど、私も昭和の歌謡曲が好きなので「シティ・ポップのノリがいいな」と伝えたり、あをいはるさんには「若い感性で書いてちょうだい」みたいな、ある意味ザックリとした乱暴なお願いの仕方でしたね(笑)。
──あえて限定はしなかったと。
Kaya そうですね。少し話は飛びますが、6月11日に15周年のアニバーサリーライヴをしたんですけど、絶対に衣装は白いドレスにしようと決めていました。このアルバムが、もし自分でコンセプトを決めて自分だけの色で作っていたら、きっと薔薇をイメージした赤いドレスを選んでいたと思います。
でも、今回のアルバムのように“どんな色にも染まれる自分”を表現したかったのと、ライヴの照明で白いドレスが、赤いドレスにも青いドレスにもなる。そういうイメージを形にしたかったんです。
天野月との共作が実現! 傷ついた人がいるなら励ますより寄り添いたい
──そのコンセプト通り、本当に様々なテイストの曲が収録されていますが、楽曲を受け取った時に“これは挑戦だな”と感じた曲はありますか?
Kaya 天野月さんが作ってくれた2曲「ROSE」「Pray」ですね。もともと昔から月さんのファンで、曲もずっと聴いていて大好きなんですけど、月さんのメロディは歌うとなると、同じメロディがないとか、半音だけ下がったりとすごく難しいんです。でも、憧れの人の曲を歌えたのは本当に嬉しかったです。
──歌詞は共作になっていますね。
Kaya 実は、「Pray」は制作の1年前には受け取っていたのですが、作詞をしようと思った時に、言葉が何も出てこなくて……。自覚はなかったのですが、コロナ禍という不自由を強いられる生活や、みんなが何かに怒りを感じている殺伐としたなかで、無意識のうちに心がダメージを受けていたんだと思います。
これまでKayaとして活動してきて15年、歌を始めてからは25年、ずっと歌詞を書き続けてきたなかで初めての経験でした。自分の手元には月さんが書いたとてもステキな曲がある。それなのに「書けない」ということに焦りましたね。“何かをしなくちゃいけない”と思って富士山に登ったりもして……。
その後、1年かけて歌詞を書いて月さんに渡したら、冷静に分析していただいて「少し分かりにくいので私からも提案していいですか?」と言葉をかけてもらいました。
──作品に対するお互いの愛情を感じますね。そこから歌詞はすぐに仕上がったのでしょうか?
Kaya 一部、相手に発破をかけるようなちょっと強い表現があったので、そこは月さんに「他の言葉に変えていいですか」と相談しました。私は例えば傷ついた人がいたら励ますより側にいたい、寄り添いたいと常々思っているんです。それはコロナ禍を通して一番強く感じたことでもありました。
──あえて伺いますが、Kayaさんにとって寄り添うとは?
Kaya 普段の生活のなかで、辛いとかしんどいと思っている人たちに、私たちみたいな歌い手が出来ることは「非現実をみせる=現実を忘れさせるような空間を作る」ことだと思っています。
「Pray」「ROSE」の2曲、そしてアルバムの最後に収録しているシャンソン歌手のソワレさんに作詞作曲してもらった「ここにおいで」には、〈寄り添いたい〉〈誰かの何かのキッカケになれたら〉〈夢を見ていてほしい〉といった、私が「何故歌っているのか」という歌手としての指針、核の部分を表現出来たと思っています。
「ROSE」のMVは凛とした世界観が映える仕上がりに!
──そして、表題曲の「ROSE」はMVでも独自の世界を堪能できますね。
Kaya 「ROSE」の凛とした気高さを映像に落とし込むことは意識しました。2パターンの衣装があるんですけど、メイクさんとは何回も話し合いました。ジャケ写にもなっていますが、こういうコレクション作品みたいな髪型とかメイクが好きなんですよね。それこそパリコレとかメットガラみたいな。過去の作品は全部気に入っていますが、現状で一番好きな作品に仕上がりました。
──ちなみに、今作では「ROSE」同様、作曲者が作詞をされているパターンも多いですね。
Kaya そうなんです。これだけ人に歌詞をお願いしたのは初めてです。今まで自分で書いてきた歌詞は、実体験に基づくものばかりだったので、他の人が書いた言葉では歌えませんでした。だけど、シャンソンを歌わせてもらったり、小さい頃はシンガーソングライターではなく“歌手になりたかったこと”を思い出して、今は“人の言葉を自分のフィルターでどう色付けしていくのか”という歌い手としての楽しみを見つけた感じですね。
もちろん、どうしても共感出来ない言葉や、私が歌うと嘘になってしまうと感じるものは、お願いして変えてもらっているので、どの曲もちゃんと自分の中に落とし込んで歌うことが出来ました。
「Spotlight」は、心が剥き出しにされるようなヒリヒリする曲
──そのなかでも、あをいはるさんが書かれた「Spotlight」の歌詞にはグッときました。
Kaya 後輩なんですけど、私のプライベートや、オフィシャルの「Kaya」を動かすための葛藤を、ずっと横で見てきてくれた人なんです。プラス、彼も歌い手なので、ヴォーカリストならではの苦悩といったものがリアルに表現されていて、私もすごく好きな歌詞です。
──華やかな世界で歌い続けることへの葛藤や決意が、リアルに描かれていますね。
Kaya 直球ですよね。歌っていてもヒリヒリするというか、心がそのまま剥き出しにされているような感覚になります。ライヴの前に、1人で練習をしていたら思わず泣いてしまって、本番で泣かずに済んで良かったなと思いました(笑)。
──ご本人に感想は伝えましたか?
Kaya 「本当いじわるね」と伝えたら、「なんでですか?!」って(笑)。
──突然言われたらびっくりしますね。
Kaya その後に、「こんな良い歌詞書いて勝手に裸にしないで」と言ったら、「丸裸にしてやりましたよ」と言っていましたけど(笑)。
──お話を聞くと、これまでの継続が簡単ではなかったからこその思いなのかなと。
Kaya Kayaとしての活動は16年目に入りましたが、正直これまで何度も心は折れかけました。事務所に所属せず1人でやっているので、チケットやCDの数字を目の当たりにしたり、小さなトラブルが重なった時は“全部やめよう”“もう無理かもぉ〜”って弱音を吐いたりして(苦笑)。
でも、それでも“歌い続けたい”という気持ちだけは変わらなかったから、続けてこられたんだと思います。それも「ユグドラシル」という曲に書いていて、ユグドラシルは神話の大樹なんですけど、〈折れた枝を愛しい声で 何度も継いで〉というフレーズは、折れた枝=私の心や気力を、愛しい皆さんの声で継ぎ木することで歌ってこられたという感謝の気持ちを綴っています。
心の一番弱い部分を表現した「花陽炎」のMVは、等身大の自分
──今作では、歌声のバリエーションも堪能できますが、特にアルバム1曲目に収録されている「花陽炎」は、切なくも柔らかな歌声が印象的でした。
Kaya 「ROSE」と「花陽炎」という対比する2曲のMVを撮影したんですけど、「ROSE」は気高く凛としたイメージ、「花陽炎」は桜を指していて、自分の中の心の一番弱い部分を表現しています。女々しさが爆発した“出せなかった手紙”みたいな内容になっていて、ある意味等身大の自分なので、ちょっと気恥ずかしいですね。MVも、カラコンをせず、ほぼスッピンで撮影しました。初の試みで、それこそ昔は絶対に出来なかったことです。
──Kayaさん自身が柔軟になれているんでしょうか?
Kaya そうかもしれないです。今までは「一人称は絶対に“私”じゃなきゃダメ」とか、「花よ蝶よじゃなきゃダメ」っていう自分自身で作り上げたKayaという存在が大きかったんです。でも、ようやく「すっぴんで歌っても、男の子の格好で歌っても、全部Kayaの歌だ」という自負が生まれてきたんだと思います。
リミックス曲は色気満載。爽やかさゼロの仕上がりに!?
──そして、リミックス曲「FABULOUS-morning ocean mix-」「Come closer-rose mix-」は色気のある歌声や息遣いも心地よくて、ずっとこの曲の中に沈んでいたいなと思いました(笑)。
Kaya あはははは、ありがとうございます。リミックスはどちらもすごく気にいっているので褒めていただけて嬉しいです! 「FABULOUS」は、シングルではクラブ要素のある曲でしたが、リミックスではクラブで踊り疲れて心地よい疲れとともに朝焼けに染まる雲を見る……みたいな仕上がりになっています。
「Come closer」は得意分野でもある、湿度が高くてベターっと張り付くような歌を歌ってやろうと思っていました(笑)。この曲は自分でも、レコーディング終わりに「良いの録れたー!」って拍手したくらい満足しています。「色っぽい歌い方をする」と言っていただくことがあるんですけど、そこだけに振り切った爽やかさゼロの仕上りになりました。
──改めて、多彩なアルバムだなと思います。
Kaya 1曲だけをピックアップして聴くと“Kayaは変わっちゃった”と感じる方もいるかもしれませんが、今までのアーティスト活動は、棚とか引き出しに物を詰めるように、出来ることを1つずつ増やしてきた年月だったと思っています。“変わっていくもの”と“変わらないもの”、そのどちらもお見せ出来るアルバムになったと思うので、色んなKayaをチョイスして楽しんでいただければ嬉しいです。
感極まったアニバーサリーライヴ、全国でのライヴも決定!
──そして、6月に行なったアニバーサリーライヴでは、全国ツアー(8月開催)が発表されました。
Kaya まず、アニバーサリーライヴには本当にたくさんの方が駆けつけてくれました。ファンの方をはじめ、関係者や、友人、幼馴染からも「配信を見たよ」という連絡をもらいました。ちなみに、今回の音響さんは10年以上前に一緒にアメリカに行ったスタッフさんなんですけど、わざわざ「Kayaさんの現場だから」と引き受けて来てくれたりと、本当に色んな意味で勢揃いだったんです。
いつもライヴの最後に入れている「Glitter Arch」を歌っている時に、そうやって求めてくれるみなさんがいてくれて“ずっと一緒に歌ってきたんだ”と思ったら感極まって込み上げるものがありましたね。
──そういう時間を、これからもたくさん共有できるといいですね。
Kaya まだコロナ禍ではあるので楽観視は出来ないですけど、これからもライヴをみなさんと作っていきたい。今度は私から会いに行きたいと思っているので、近くに行った際はぜひ遊びに来て下さい。
アルバム『ROSE』
Kayaが贈る色とりどりの薔薇の花束
8年半振りのオリジナルフルアルバム『ROSE』
発売日:2022年6月8日(水)
【収録曲】
1. 花陽炎(lyrics:Kaya/music&Arrange:ICHIRO KAMIYAMA)
2. Spotlight(lyrics&music:あをいはる)
3. TABOO(lyrics:Kaya/music:KEN MORIOKA)
4. Madame Rosa(lyrics:Kaya/music:Misa/Arrange:Kei Suzuki)
5. FABULOUS -morning ocean mix-(lyrics:Kaya/music&Arrange:ICHIRO KAMIYAMA)
6. Monday Monday -toy mix-(lyrics:Kaya/music:鈴木結女/Arrange:ICHIRO KAMIYAMA)
7. Come closer -rose mix- (lyrics:Kaya/music&Arrange:ICHIRO KAMIYAMA)
8. 夢路(lyrics:Kaya/music:鈴木結女/Arrange:ソワレ&おおくぼけい)
9. 禁色(lyrics&music:浜崎容子/Arrange:ICHIRO KAMIYAMA)
10. NEVERLAND(lyrics:Kaya/music:福助。)
11. 弟切草(lyrics:Kaya/music:源依織)
12. ユグドラシル(lyrics:Kaya/music:Hora/Arrange:百々政幸)
13. ROSE(lyrics:Kaya&天野月/music:天野月/Arrange:横山和俊)
14. Pray(lyrics:Kaya&天野月/music:天野月/Arrange:横山和俊)
15. ここにおいで(lyrics&music:ソワレ/Arrange:ソワレ&おおくぼけい)
<楽曲提供>
天野月 / 鈴木結女 / 森岡賢(SOFT BALLET) / 浜崎容子(アーバンギャルド) / ソワレ / ICHIRO KAMIYAMA / 福助。(ADAPTER。/THE BEETHOVEN/メトロノーム) / あをいはる(ひととなり/ex.マイナス人生オーケストラ) / ミサ(Da’vidノ使徒:aL) / Hora(Schwarz Stein) / 源依織(Phobia/exFemme Fatale)
▼通常盤
収録曲:新曲9曲含む全15曲収録
品番:TK-25
価格:¥4,000
▼配信
https://linkco.re/nU2CHd5d
Kaya ONEMAN LIVE『Under the Rose』
8月6日(土) 大阪MUSE BOX
8月20日(土) 名古屋ellSIZE
9月3日(土) 札幌SUSUKINO810
9月9日(金) 新潟6studio.
9月11日(日) 仙台ROCKATERIA
9月16日(金) 福岡DRUM SON
Kaya
性別やジャンルの壁を、歌とドレスであざやかに飛び越えるソロシンガー。
2002年、MALICE MIZERのManaのプロデュースによりユニット『Schwarz Stein』ボーカルとして活動を開始。
2006年よりソロを開始、2008年シングル「ショコラ」でメジャーデビュー。耽美な歌詞とダンスミュージックを融合させた楽曲で独自の世界観を確立、アメリカ、南米、ヨーロッパなど海外公演も多数開催。 テレビ出演や、FM徳島第二木曜日レギュラーパーソナリティーなど活動の幅を広げている。シャンソン歌手としても活動。プロデューサーを務める『新春シャンソンショウ』は個性的な歌手を毎年ゲストに迎え開催、人気を博している。
Official Site:https://kaya-rose.com/
Twitter:@Kaya_rose
Instagram:@kaya_official_account
YouTube:Kaya Official Channel